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中東と東アジアをつないだ国際会議 - 酒井啓子 中東徒然日記

ニューズウィーク日本版 / 2014年12月19日 12時37分

 日本政府は、研究成果をどんどん国際発信せよ、欧米に挑戦してこい、と太鼓をたたいているが、太鼓をたたかなくても魅力ある企画を見せれば、人は来る。日中韓の新進気鋭の中東研究者が、シンガポールに住む英国の大物学者の司会で研究発表を行い、中東の、一世を風靡した思想家の娘が議論にコメントをする、なんていうグローバルな舞台が京都で展開する。日本にいながらそんな舞台に立てるというのは、なんと贅沢なことか。

 もうひとつ、感銘を受けたのが、質の高い学術水準を持つ若者の参加が増えたことだ。二年に一度の研究者間の交流、というと、それぞれの学会の重鎮が集まって社交を繰り広げるのが、良くも悪くも「アジア的伝統」だった。それが、まず日本から若手研究者がどんどん手を挙げて参加する。それはいいねえと、10年ほど前に続いたのが韓国だった。日本と韓国の中東学会では、今や女性と若者が参加者の大半を占める。それに今年は、中国が続いた。フロアからは次々に、「アジアの若手女性研究者」の手が挙がり、鋭い質問が飛び交う。こういう日中韓の「戦い」は、大歓迎だ。そんな空気のなかで、サウディアラビア出身の女子大生が、東アジアとサウディアラビア、ともに女性の管理職進出が遅れていることを比較した研究を発表する。こういう展開は、欧米で開催される学会では、絶対に見られない。

 研究の質、報告のスキルなどは、英語ネイティブの研究者たちに比較すれば、まだまだである。国際会議としては、まだマイナーリーグかもしれない。だが、設立して20年、ようやくアジア発の初めての中東研究の学会連合は、善隣外交、社交の域を超えられたようだ。社交でやっている間は、学問上の意見が異なっていても心から対決できない。同じ研究を目指すもの同士だという自覚が共有されれば、わざわざ「外交」を意識しなくても、切磋琢磨、丁々発止戦い合うことができる。東アジア外交も、対中東外交も、そこから始めればまだまだ大丈夫と、ちょっと安心した会議だった。




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