ルコント久々の大人の恋愛物語『暮れ逢い』
ニューズウィーク日本版 / 2014年12月19日 17時15分
舞台は1912年のドイツ。実業家ホフマイスター(アラン・リックマン)の邸宅に、才覚あふれる青年フリドリック(リチャード・マッデン)が個人秘書としてやって来る。ホフマイスターの若く美しい妻ロット(レベッカ・ホール)と次第に引かれ合うフリドリックにある日、南米転勤の辞令が下る。2人はフリドリックが帰国する2年後までの変わらぬ愛を誓うが──。
パトリス・ルコント監督の最新作『暮れ逢い』は、シュテファン・ツバイクの小説を原作にした恋愛物語(日本公開は12月20日)。ルコントならでは悩ましく切なく美しい描写で、恋に落ちる男女の姿をつづっていく。
長編デビューから約40年。すべての作品に全身全霊を傾けてきたと話すルコントに話を聞いた。
──『髪結いの亭主』『イヴォンヌの香り』などの作品から、「恋愛映画の名匠」とも呼ばれることをどう思う?
とても嬉しいよ。恋愛には心のざわめきとか、動揺といったものが常に含まれている。僕は映画を作るとき「人間の感情を支配したい」と思っている。それが観客にうまく届いているということだから。
──ラブストーリーを手掛けるときに大切にしていることは。
それは小説家も同じかもしれないが、自分が書いたり、撮ったりしている人物を愛情をもって見つめることだろうか。その人物を愛するだけでなく、その人物を演じてくれる役者をも愛する。だから2倍の愛情を注ぐということだ。
──ではキャストを決めるときは、「この人が好き」という直感で選んだりするのか。
その通り。あまり考え込まない。まあ、私に知性があるかどうかは別にして、頭で考えるのではなく、心で感じるんです。
──主演女優と監督はカップルになること多いが、そうした経験は?
ノン。僕もフランソワ・トリュフォー監督に似ているところがあって、一緒に仕事をする女優に恋をする。でも違うのは、そのたびに結婚はしないってこと(笑)。
──では撮影が終わって、失恋みたいに落ち込んだりすることはない?
ないよ。撮影中は、頭の中に思い描いた世界をいかに映像化するかということで、かなりテンションの高い状態でいる。だから確かに撮影が終わったときは、自分の中から何かが抜けていった感じはする。映画が抜けていった、あるいは俳優たちが抜けていった、空っぽになったという感じ。でも同時に、「全部撮り終えた」という安堵の気持ちや解放感が大きい。
それに撮影が終わっても編集作業が残っているし、音楽もつけなきゃいけないし、宣伝のための取材も受けなくてはならない。まだまだ仕事が続いていて、映画と一緒に生きている感じがする。
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