ピケティ賛否でわかるアメリカ経済の対立軸 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年2月10日 15時49分
反対に日本で言う「保守」の立場、つまり戦前の立憲政友会から現在のアベノミクスに至る保守派の政策が、金融緩和と公共投資を大いに進めながら、格差是正には極めて冷淡な「セットメニュー」になっているということは、クルーグマンなどのアメリカのリベラルからは、理解しがたいようです。
さて、アメリカにおける格差批判といえば、2011年から燎原の火のように広がった「占拠デモ("Occupy Movement")」があります。1%の富裕層と99%の間にある格差を批判したのがこの運動だとすれば、ピケティの思想との親和性はありそうです。ピケティの側としても、『21世紀の資本』を書き進めながらこの運動を意識したようですが、では実際に「占拠デモ」を行っていた側の反応はどうかというと、ブログなどに出てくる反応は意外と冷淡だったりします。
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つまり、アメリカの例えば「ウォール街占拠デモ」に参加した若者の主張というのは、必ずしも「ウォール街に代表される資本主義」を敵とみなしてはいなかったのです。彼らが最も厳しく批判したのは、「多くの社員が高給を得ているウォール街の金融機関」が、リーマン・ショック後の金融危機に際して「公的資金の注入」を得て救済されたことが「不公正」だというものでした。
別に彼らも「r>g」などとは思っていないのです。彼らは、公的資金の注入を批判し、また雇用における世代間格差、とりわけ機会の不平等に対しては怒りを向けていましたが、ピケティのような「大きな政府による再分配」は要求していませんでした。というのは、09年にオバマが就任した際には、彼らはオバマに大きな期待を寄せたのですが、若者の雇用が回復しない中での、オバマの政治への失望というのが、この「占拠デモ」のエネルギーになっていったという背景があるからです。
つまり、「大きな政府」による政策への失望が彼らの出発点であり、結果として彼らのヒーローは、むしろリバタリアンのロン・ポール下院議員(当時)だったりしています。
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