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「イスラム国」が示した「非対称戦争」の先にある未来 - 池田信夫 エコノMIX異論正論

ニューズウィーク日本版 / 2015年2月12日 22時56分

 さらに湾岸戦争以降は戦争の無人化が進み、米軍の犠牲を最小化するために民間軍事会社(PMC)が使われるようになった。今回の人質事件で犠牲になった湯川遥菜氏の個人会社もPMCと名乗っていたが、世界には大規模なPMCがたくさんある。特に中東には、アメリカに兵士や武器を供給する会社が多い。

 鉄道や電話会社が民営化される時代に、軍隊が民営化されても不思議ではない。むしろ中世以前は、兵士は国王が傭兵として雇うのが普通だった(英語のsoldierの語源は「傭兵」)。徴兵制による国民皆兵というのは、近代国家に特有の制度である。それは陸上戦主体の戦争では意味があったが、無人化した戦争ではあまり意味がない。

 20世紀後半の平和を支えたのは国家と個人の暴力の非対称性だったが、グローバル資本主義がそれを崩そうとしている。その究極のリスクは、テロリストが核兵器を入手することだ。核兵器の製造にはそれほど高度な技術は必要なく、北朝鮮でも開発できる。その材料となるプルトニウムにも国際的な「ブラック・マーケット」があり、パキスタンから北朝鮮やイランやリビアなどにウラン濃縮技術が供与されたともいわれる。

 私が『資本主義の正体』で書いたように、資本主義が成立した最大の基盤は、近代国家による暴力の独占とその管理だった。平和がなければ、商取引も生産もできない。その基盤をグローバル資本主義が崩そうとしているのは皮肉な状況である。

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