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ISISの背後にうごめく神秘主義教団の冷酷な影

ニューズウィーク日本版 / 2015年2月20日 12時22分

 ナクシュバンディー教団の最大の根拠地はインド北西部からパキスタン、アフガニスタンにかけての三日月地帯。国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンも潜伏した所だ。この拠点を征服できた外国勢力はいまだない。1979年にアフガニスタンに侵攻したソ連は世界中から集結したムジャヒディン(聖戦士)を前に敗退。社会主義陣営の退潮を招いた。

 米軍も近いうちにアフガニスタンから全面撤退する。事実上の敗退だ。やがて、ISISで戦闘経験を積んだウイグル人がパミール高原を越えて帰郷した暁には、中国が夢想するシルクロード経済圏も泡と化すだろう。

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 20世紀は、社会主義対資本主義というイデオロギー対立の歴史をつくった。21世紀はイスラム思想が紛争の主役の一方となるのは間違いない。ISISを単なる過激派として片付けるだけでは問題は解決しない。ムスリムたちを導く神秘主義教団の思想的土壌はいかにして醸成されているのかを理解しなければならない。ロシアや中国、そして欧米諸国も巧妙な形でイスラム社会を抑圧し、搾取し続けているという構図──少なくとも彼らにはそう映っている以上は──を解消しない限り、ムスリム世界の問題は消えない。

 先進国が内部で「資本の再分配」というマルクスの空論を再販売するような議論に終始する間にも、スーフィーたちが西洋と中華帝国を冷酷な視線で見ているのを忘れてはいけない。

[2015.2.24号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)


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