駐韓アメリカ大使襲撃事件、アメリカの「第一報」は? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年3月5日 11時55分
3月5日の朝(現地時間)にマーク・リパート駐韓アメリカ大使が、ソウル市内の「世宗(セジョン)文化会館」で刃物(25センチの果物ナイフという報道もあり)を持った男に襲撃されたというニュースは、アメリカではトップ扱いで報道されています。
CNNやAPのウェブサイトでは、顔から血を流し、シャツとネクタイに鮮血が飛び散った状態の大使の写真と共に報道されています。アメリカでは血に対する抵抗感というのは、日本とは比較にならないものがあり、例えば映画などで「赤い血」を表現した映像は、それだけで成人指定になるぐらいです。
ですから、ショッキングとしか言いようのない写真が報道に使われていること自体が、(他に適切な写真がなかったからかもしれませんが)ニュースとしての衝撃度が高いことを示していると思います。
リパート大使というのは、国務省と海軍での経歴を経て、上院・民主党の政策アドバイザーとしてオバマ大統領と密接に仕事をして以来、大統領と極めて親しい「友人」であると言われる外務・軍事官僚です。現在42歳という若さで韓国という規模の大使に任命されているということは、論功行賞というよりも「具体的な使命」を帯びて任命されたことが推測されます。
事件の直後に大統領はソウルで入院中のリパート大使に直接電話をかけて見舞ったそうです。大統領との「近さ」そして事件の重大性を示すエピソードです。ちなみにリパート大使は、着任以来、韓国の「草の根」との対話を重視しており、公邸から大使館まで徒歩で出勤する間にソウルの市民と毎日挨拶を交わしていたそうです。
そんなリパート大使の襲撃に関して、現時点でのアメリカでの報道では、犯人は「南北統一運動家」であって、米韓の軍事演習に反対する立場から大使襲撃という暴挙に出たという解説がされています。
とりあえず「第一報」はそんなところですが、現時点で伝えられている範囲からこの事件の位置づけを考えてみたいと思います。
まずアメリカですが、この事件は個人の暴発に過ぎないとは言え、衝撃は大きなものがあります。ではアメリカにとって、この事件は何を意味するのでしょうか?
それにはオバマ政権が「2期目」のアジア外交について、何を主眼にしていたのかを考える必要があります。それは、アジアの「リバランス戦略を深化させる」方向性だという説明がよくされます。
この「リバランス」というのは、1期目のオバマ政権が「これからはアジア重視だ」ということを言い始めた時から使用している概念で、要するに国力を拡大し、軍事的な野心を見せ始めた中国に対して「あらためてきちんとバランス・オブ・パワーを確保して抑止しますよ」というメッセージでした。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
焦点:トランプ米政権、結束した敵対勢力に直面 外交で新たな課題
ロイター / 2025年1月22日 16時40分
-
プーチンの本当の狙いはウクライナの領土ではない…元駐日露大使が明かす「戦争終結後の大統領プラン」の全貌
プレジデントオンライン / 2025年1月15日 7時15分
-
トランプ政権の次期駐日大使ジョージ・グラスとは何者か?
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月9日 16時0分
-
トランプ新政権の日本への意味とは その4 孤立主義ではない
Japan In-depth / 2025年1月9日 11時21分
-
トランプ新政権の日本への意味とは その4 孤立主義ではない
Japan In-depth / 2025年1月9日 11時0分
ランキング
-
1トランプ氏が鑑賞していた「花火」も中国製だった 最大の輸出先はアメリカなのに…“追加関税発動”で中国・花火の街からも不安の声
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年2月5日 16時46分
-
2「南モンゴルのマンデラ」緊急搬送「注視を」楊海英氏、中国の軟禁下もノーベル平和賞候補
産経ニュース / 2025年2月5日 14時30分
-
3ロシア、トランプ氏の発言歓迎 ウクライナのNATO加盟巡り
ロイター / 2025年2月5日 19時27分
-
4トランプ氏の「ガザ所有」は国際法違反の可能性…ジュネーブ条約で強制移住を禁止
読売新聞 / 2025年2月5日 20時48分
-
5トランプ氏の放水命令で数十億リットルの水が無駄に 専門家
AFPBB News / 2025年2月5日 12時32分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください