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窮乏ギリシャが蒸し返す対ナチス戦争賠償の本気度

ニューズウィーク日本版 / 2015年3月19日 18時13分

 ギリシャが財政緊縮策の是非をめぐってドイツとの対立を強めるなか、第二次大戦中のナチス・ドイツによる損害の賠償を請求したギリシャ新政権がさらに強硬な姿勢を打ち出している。

 ギリシャのパラスケボポウロス法相は先週、国内最高裁の2000年の判決を執行する書類に署名することと、ギリシャ国内にあるドイツ資産を没収する用意があると明らかにした。

 ギリシャ最高裁は00年、ドイツに対し、1944年6月にギリシャ中部のディストモ村でナチスに虐殺された住民218人の遺族への賠償を命じている。しかしドイツの反発を恐れた当時の法相は、執行を命じる文書に署名しなかった。

 今回の法相の発言は、ギリシャが公的債務残高のほぼ半分に当たる1620億ユーロをナチスの戦争犯罪への賠償金としてドイツに要求し、拒否された直後のことだった。

 パラスケボポウロスは、ツィプラス首相も発言の意図は承知しているとして、「政治的に時期が熟せば」執行書類に署名すると語った。

 ツィプラスは先週、歴代のドイツ政権は戦時中の賠償金支払いを回避するために「法的トリック」を使っていたと非難した。ドイツは60年の協定でギリシャに1億1500万マルク(当時のレートで約97億7500万円)を支払ったが、それはインフラの破壊や戦争犯罪、ナチスに強要された戦時融資を完全に賠償するものではない、と彼は考えている。

 ツィプラスはギリシャ議会で行った感情的な演説の中で、政府は「歴史と戦った人々と、ナチズムを破るために命をささげた犠牲者」への義務を負うと断言した。さらに戦時融資の償還請求権を主張することが自分の「倫理的義務」だと、以前と同じコメントを繰り返した。

ドイツは解決済みの立場

 ナチスの軍隊は3年半にわたってギリシャを占領し、国民を苦しめ経済を破壊した。アテネだけで餓死者が4万人を超え、ギリシャ中央銀行は膨大な資金を奪われた。

 だがドイツ政府は、東西両ドイツが旧連合国の米英仏ソと90年に調印したドイツ最終規定条約で、賠償問題は解決済みという立場を取っている。

 メルケル政権のステフェン・シーバート報道官は、賠償金の問題とギリシャへの補償は「法律的にも政治的にも解決済みだ」とした上で、各国は将来に目を向けて現在の問題に集中すべきだと言う。

 ドイツ財務省の報道官も、賠償金に関するギリシャ政府との交渉の必要性を否定し、ギリシャの債務問題から目をそらさせる策略だと主張した。

 財政危機以来、ギリシャとドイツの緊張は高まる一方だ。ドイツは10年にユーロ圏がギリシャに対して行った協調融資を主導する立場だった。ドイツの閣僚たちはギリシャの予算と賃金の削減を提唱した。いまギリシャ政府は、総額2400億ユーロに上る救済融資の内容について交渉を進めている。

 ユーロ圏の財務相会合は先月、ギリシャのバルファキス財務相が改革のリストを提出すると約束したことから、ギリシャの金融支援プログラムの4カ月延長に合意した。

 だがブリュッセルで先週行われた同会合では、デイセルブルム議長(オランダ)が「時間を浪費している」とギリシャを非難。バルファキスにまじめに交渉に取り組むこと、より詳細な改革のリストを提出することを求めた。

[2015.3.24号掲載]
ヘイリー・リチャードソン

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