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「2030年に原子力比率20%」は実現できるのか - 池田信夫 エコノMIX異論正論

ニューズウィーク日本版 / 2015年3月26日 17時0分

 原発を止められたおかげで各電力会社は石炭火力を新設しているが、大気汚染のリスクは原子力より石炭火力のほうが大きい。WHO(世界保健機関)の調査によると、毎年世界で700万人が大気汚染で死亡しているが、その最大の汚染源が石炭だ。特に中国では、石炭による大気汚染で年間100万人が死亡しているともいわれる。

 エネルギー政策は「原子力か否か」という神学論争になりがちだが、本質的には、いかに最小のコストで環境汚染を最小化するかという経済問題であり、それは価格メカニズムで行なうべきだ。再生可能エネルギーも火力や原子力と競争できるなら、固定価格買取制度などの補助金は廃止し、価格で競争すればよい。

 ただし国際公約としてCO2削減目標を設定するなら、政府の介入が必要だ。日本は排出権取引を一部導入しているが、これは排出権の割当に行政の裁量が大きく、統制経済になりかねない。多くの経済学者は炭素税を推奨している。

 どんな電源が効率的かは、こうした「炭素の価格」に依存する。炭素1トンあたり数万円の高率の炭素税をかければ、原子力や再生可能エネルギーが有利になる。それは(排出権でも炭素税でも)国民負担になる。

 単に原子力を何%にするかなどという論議に意味はない。気候変動だけでなく大気汚染なども含めた環境汚染をいくら減らすのかという目標を明確にし、その費用を明らかにした上で国民的な論議が必要である。

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