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東大PEAKは「高辞退率」を恥じるな - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2015年4月2日 10時47分

 何に苦労するのかというと、「併願による辞退」が起きるのを前提として、最終的に「入学する新入生集団の質と数を適正に確保」するのが大変だからです。

 トップ層をどう引き止めるか、早期選考(専願の大学と併願可の大学があります)ではどのレベルまで合格を出すか、本選考では辞退を見越した合格の上乗せをどうするか、補欠はどうするか、など入試事務室の苦労は絶えないそうです。

 さらにその他の大規模校、中位校などの場合は同様の苦労を通じて「毎年少しずつでも入学する集団のレベルを上げていく」ことが求められるわけです。その場合に入試事務室は「辞退」に関してどう考えるのでしょうか?

 基本は「辞退者が出る」というのは「良いこと」だという理解をします。どうしてかというと、「他校」に生徒が流れたということは、「自校の現時点での入学者集団」と比較して「より上位の学生が少なくとも応募してくれた」あるいは「入学先の候補として考慮してくれた」ということだからです。

 例えば、入学案内のホームページなどでは「本校合格者の標準的な併願先」ということをアピールする学校があります。その場合に、明らかに「その学校より上位」の校名が書いていることが多いのですが、それは「こんな学校に受かった学生も本校に出願していますよ。進学先として真剣に見てくれていますよ」というメッセージになるからです。

 要するに「併願が当たり前」である英語圏の大学では、新設校や発展途上の学校の場合は「まず優秀層に出願してもらう」ことが大切で、最初は辞退されても仕方がないのです。毎年その中から数名でも優秀層が入学してくれば、学生の質も、従ってディスカッション形式の授業の内容も上がって行くこととなり、やがて卒業生が社会で活躍して行くことで大学の評価は上がっていく、そうした考え方をします。

 東大PEAKの場合ですが、もちろん辞退理由を分析して、奨学金制度の不備であるとか、コース内容が限られているといった「問題点」を見出して改善するというのは良いことです。

 ですが、辞退者が大量に出たというのは、国際的に見ればアジアにある実績ゼロの新設学科に過ぎないこのコースに、「もっと上を目指す優秀層」が大量に応募してくれたということなのです。これはコースの立ち上げ期においては成功なのです。今年もPEAKは、もうすぐ(4月15日)合否の発表を行いますが、辞退が発生することを前提に合否を出すでしょうし、それで良いのです。

 これに対して、PEAK以外の東大の科類には、現状では、英語圏の優秀な学生を受け入れて教育水準を高めていく受け皿すらないわけです。そんな中で、PEAKを成功させ拡大してゆくことは急務であると思います。

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