偽物大国がもくろむ中国製ダライ・ラマ計画
ニューズウィーク日本版 / 2015年4月3日 11時56分
満州人が清朝を樹立してからも、モンゴルの宗教政策は受け継がれた。歴代の清朝皇帝はチベット仏教の保護者として、忠実な檀家の役割を果たしてきたし、歴世のダライ・ラマも清朝皇帝の長寿と健康を祈った。領土問題が存在しなかった当時と比べ、今やチベットが深刻な民族問題となっているのは、中国によるチベット侵略以降だ。中国が政教一致の最高指導者ダライ・ラマを敵視している以上、問題解決の見通しは立たない。
私はチベット各地を何回も歩いてきた。「偽パンチェン・ラマ」が北京から訪れるたびに、政府は気前よく札束をチベット人に配って動員していた。その実態はといえば、歓迎行事に参加する者は少なく、金に目がくらんで動員された人々の顔に敬意のかけらも見られない。まさに惨憺たる光景だった。
ダライ・ラマに対するチベット人の尊崇の念はパンチェン・ラマの比ではない。もし「偽ダライ・ラマ」がチベットを闊歩するようになったら、チベット人は屈辱に震え、武力闘争をも辞さない覚悟で臨むことだろう。中国の民族問題は一層困難になると予想してよい。
[2015.4. 7号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
台湾、国慶節に訪台の中国人2人を強制送還 「台湾は中国の一部」と香港人デモ妨害
産経ニュース / 2024年10月3日 19時12分
-
中国・天安門広場で「烈士記念日」の式典 習近平氏ら最高指導部メンバーが参列
産経ニュース / 2024年9月30日 14時5分
-
アメリカは中国との絆を切る
Japan In-depth / 2024年9月22日 23時0分
-
大国インドが中国のような独裁にならなかった訳 絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌
東洋経済オンライン / 2024年9月16日 18時0分
-
米大統領選を「静観」する中国。トランプとハリス、どちらの勝利を望んでいるか
トウシル / 2024年9月12日 7時30分
ランキング
-
1ガザ建物59%損壊、農地も激減 「生き地獄」と国連総長
共同通信 / 2024年10月6日 18時10分
-
2「死に直面しても屈しない」=トランプ氏、銃撃現場で再び演説―米大統領選
時事通信 / 2024年10月6日 14時0分
-
3ガザ戦闘1年前に世界各地でデモ 米では焼身自殺試みも
AFPBB News / 2024年10月6日 14時42分
-
4ネタニヤフ首相、マクロン仏大統領を「恥知らず」と非難…軍事支援なくても戦闘継続を強調
読売新聞 / 2024年10月6日 20時10分
-
5イラン精鋭司令官、安否不明か=レバノン空爆で死傷情報も―米紙
時事通信 / 2024年10月6日 18時36分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください