ロシアの脅威が生んだ電子大国エストニア
ニューズウィーク日本版 / 2015年4月16日 17時0分
まだまだ課題はありそうだが、世界の先陣を切って行政サービスの電子化を進めてきたイルベス政権は、電子政府の特長を生かして世界中から起業家を募るという野心的な計画を進めている。エストニアを1度訪れただけで、電子IDカードを交付され、祖国に居ながらにして、エストニアで会社を設立し運営できる「電子住民」制度だ。政府は2025年までにバーチャル住民を1000万人に増やす計画で、希望者を募っている。
すでにエストニア政府の文書はすべて電子化され、外国の大使館のサーバーにバックアップが保存されている。「書類のない世界は想像しにくだろうが、エストニアではそれが当たり前だ」と、エストニア政府の最高情報責任者タービ・コトカは説明する。「確かに、電子化することで、サイバー攻撃の脅威は大きくなる。しかし、われわれが常に意識しているのは暴力的な隣人の脅威のほうだ」
たとえロシアに占領されても、電子政府が機能すれば、祖国を守れる――エストニアの先進的な取り組みは小国の賢い自衛策でもあるようだ。
エリーサーベト・ブラウ
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