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在宅遺伝子テストでわかること - 瀧口範子 @シリコンバレーJournal

ニューズウィーク日本版 / 2015年4月22日 19時46分

 ひとつは、23アンドミー(23andMe)というスタートアップが開発したキットで、発売を開始した2007年当初、250もの健康状態や発病の可能性がわかると謳っていた。こちらは価格がもっと安く99ドル。同じように唾液を送って解析を受ける。

 ただ、判定する病気があまりに幅広いことから、FDA(連邦食品医薬品局)が医療機器としてひとつひとつ同局の承認を受ける必要があるとし、今はテストの種類がかなり限定されている。
 
 もうひとつ、アメリカ人に人気の在宅遺伝子テスト・キットは先祖がわかるというもの。

 アメリカ人は、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどのさまざまな人種から成り立っていて、混血もかなり多い。ところが、日本の本籍登録のような制度がないため先祖を知ることが難しく、ことに曾祖父母より以前の世代になると、どこから来たのか、結婚した相手はどうだったのかといったことがわからない場合がほとんどだ。

 先祖キットはやはり唾液を送るだけで、自分の血縁の構成がわかる。たとえば、アンセストリー・ドットコムのテストを受けた歌手、ヴァネッサ・ウィリアムズの場合は、ガーナ23%、ブリテン諸島17%、カメルーン15%、フィンランド12%、南ヨーロッパ11%、トーゴ7%、ベニン6%、セネガル5%、ポルトガル4%のDNA構成がわかったという。かなり詳細まで把握できるのがわかる。先祖探しが好きなアメリカ人の間で、このキットはけっこう人気になっている。

 もちろん、こうした在宅遺伝子テスト・キットがかかえる危険性もあるだろう。遺伝子情報が広く簡単に手に入ることで、新しいタイプの個人情報が売買されたり盗まれたりするような状況が出てくることが予想される。その結果、遺伝子差別も起こりかねない。

 また、自分の遺伝子なのだからその情報を手にするのが当たり前という主張があって、それも納得がいくのだが、すべての人々がそうした情報を正しく解釈できるのか、安全に扱えるかのかは別問題だ。

 これまで一部の特権を持つ人々や専門家によって独占されてきた情報が民主化されるという面では歓迎だが、すでに一般人への教育が急がれる時期に入っている。




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