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イギリス総選挙がアメリカで関心を呼ばない理由 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2015年5月12日 10時48分

 イギリスへのEU諸国を通じた移民流入の加速が社会問題になっており、職を奪われた若年層も含めて「EU離脱論」があること、またその「EU離脱論」を主導した保守党が勝ったということも、アメリカでは今ひとつピンと来ていない面があります。

 アメリカの移民問題と言えば、メキシコ国境経由の不法移民問題がありますが、今はその合法化へ向けて大統領令が出されるなど、アメリカでは「移民排斥」ムードは薄くなっています。そんな中で、イギリスの問題への関心も低いのです。

 今回のイギリスの総選挙では、スコットランド民族党(SNP)が大躍進して、労働党の議席を大きく奪っています。また、昨年9月の独立を問う住民投票で敗北して辞任したサーモンド党首に代わって登板したニコラ・スタージョン党首が「左派政策」を雄弁に語って人気を獲得しています。ですが、このスタージョン党首という濃厚なキャラクターに関しても、アメリカではほとんど紹介されていません。

 これは、アメリカの世論の中にある、「オバマ、ヒラリーといった中道左派で十分」、つまりそれより左のポジションの政治家には興味はあまりないという雰囲気が反映していると思われます。アメリカで「左派の女性政治家」としては、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ州)という存在があるのですが、彼女でも「根拠の薄い左派ポピュリスト」という批判がされている程なので、ウォーレンよりさらに左のスタージョンには関心は向かないのだと思います。

 そんなわけで、極めて近い関係にあるイギリスの総選挙も、アメリカでは関心がほとんど払われませんでした。何点か理由を考えてみましたが、やはりアメリカが「内向き」ということが最大の理由だと思います。何と言っても、現在のアメリカ世論にとって最大の関心事はボルチモアの人種暴動です。

 暴動そのものは警官6名の起訴によって沈静化しましたが、その際にミュージシャンのプリンスが支援コンサートを行ったこと、強引に起訴に持ち込んだ若手のアフリカ系地区検事に賛否両論があること、一方でミシシッピ州では「警官に対するヘイト射殺事件」が発生したことなど、この事件を含めた警察と人種の問題はまだまだ落ち着いていないのです。

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