おバカ投稿を削除できるお助けアプリ
ニューズウィーク日本版 / 2015年5月20日 17時36分
「このメッセージは自動的に消滅する」----がビジネスとして成立する時代がやってきた。
フェイスブックやツイッターで、悔やんでも悔やみきれない投稿をしてしまった経験は誰にもあるはず。ネット企業による個人情報の収集や使用法への懸念も増すなか、ネット上のやりとりをなかったことにできるアプリケーションが登場した。
ニューヨークのスタートアップ企業、ディストラックス(Dstrux)社のアプリを使えば、ユーザーは自分のメッセージや投稿に「有効期限」を設定できる。それらがスクリーンショットに撮られたり印刷されることも、コンピューターやクラウドに保存されることもブロックできる。
プライバシー保護にさほど敏感ではないアメリカでこそ伸び悩んでいるが、エジプト、レバノン、ヨルダンなどの中東諸国ではアラビア語版が1日数千人のペースでユーザーが拡大中。ロシア語版の立ち上げ準備も進んでいる。
先週はドイツ語版もリリースされた。ドイツは米国家安全保障局(NSA)のスパイ活動に猛反発した国。ディストラックスの創業者でCEOのネイサン・ヘクトは、そこに目を付けたわけだ。
「匿名性というよりは管理がポイントだ」と、ヘクトは言う。「私もかつてはソーシャルメディアでなんでもシェアしていたが、取り消したい、取り戻したいと思っても不可能だった。それである時、ひらめいた。そもそもデータがそこにある必要性はないのだと」
フェイスブックやツイッターに写真や動画を直接アップする代わりにディストラックスを使えば、数分以内に自動削除用のリンクを作成・投稿できる(削除は手動でも可能)。ヘクトによれば、ユーザーの位置情報やIPアドレスも収集されないし、軍事レベルの技術を使って情報の足跡は完全に消し去っているという。
「個人情報を使ってビジネスをしているフェイスブックやグーグルとは真逆のビジネスモデルだ」と、ヘクトは言う。今は無料のアプリだが、ゆくゆくは有料化したいと考えている。
その特徴ゆえに、ある種の国ではディストラックスへの抵抗も強い。検閲大国の中国では、大手アプリケーションストアでの取り扱いを何カ月も妨害されてきた。最大の障壁は検索大手の百度(バイドゥ)だ。ヘクトに関する情報など、ディストラックスに関する情報を次から次へと引き出そうとする。
「どれだけ情報を渡しても、また新たな要求を出してくる」とヘクトは言う。裏にちらつくのは中国当局の影だ。「結局、彼らは中国人にこのアプリを使わせたくないのだろう」
ジェフ・ストーン
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