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欧州を蝕むヘイト犯罪の深刻度

ニューズウィーク日本版 / 2015年5月25日 17時2分

 長引く景気低迷や移民の増加、極右政党の台頭を追い風に、欧州各国で外国人排斥の空気が強まっている。

 ブリュッセルに本部を置くNGO「人種差別に反対する欧州ネットワーク(ENAR)」が先週発表した報告書によれば、13年にEU内で発生した人種関連のヘイト犯罪は4万7210件。しかも、この数字は氷山の
一角にすぎず、イスラエルのガザ侵攻やパリの風刺週刊紙襲撃事件があった14〜15年はさらに増えているとみられる。

被害者の多くはムスリム、それも弱い女性

 被害を最も受けやすいのはイスラム教徒やアフリカ系移民、少数民族のロマ人などだ。なかでもムスリム女性への暴力は深刻な問題で、フランスではイスラム教徒の被害者のうち78%が女性だという。

 当局がヘイト犯罪の実態を十分に認識していない点も大きな問題だ。ENARによれば、ヘイト犯罪の件数を集計して公表しているのは、EU加盟国のわずか3分の1。また、人種差別の要素を考慮することなく通常の犯罪として処理されているケースも少なくない。

[2015.5.19号掲載]
フェリシティ・ケーポン

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