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【WEB再録】泥まみれのFIFA帝国

ニューズウィーク日本版 / 2015年6月2日 11時42分

 FIFA会長選挙では数がものをいう。サッカー発祥の地イングランドも、投票ではソロモン諸島やビルマ(ミャンマー)と同じ1票の権利しかない。当然、弱小国をごっそり味方に付けた者が勝つ。イギリスでの報道によれば、02年の再選に際してもブラッターはリビアのムアマル・カダフィ大佐が用意した飛行機で世界を飛び回り、現金と口約束をばらまいたとか。

情報源に甘かったメディア

 しかし、どこの国でもスポーツ担当の記者は主催団体や関係者に甘く、FIFAの腐敗を鋭く追及する報道も行われてこなかった。選手やコーチ、チームのフロントなど限られた情報源を大切にせざるを得ないからだ。

 それでもブラッター時代に入ってからの行き過ぎは目に余る。そしてついにイギリスのメディアが、18年と22年のW杯開催国を選ぶ過程での醜い騒ぎの内幕を暴露した。

 イングランドは開催国の地位を勝ち取るべく数百万ポンドの大金を投じた。しかしFIFAの理事たちに直接手渡すことはしなかったため、大した役に立たなかったらしい。

 理事の1人はサンデー・タイムズ紙のおとり取材に対して、ほかの2カ国は既に金を払ったと語り、別の1人は80万ドルを要求した。ブラッターはこの報道に、心が痛むと語った。

「世の中には悪がはびこっている。サッカーの世界も同じだ」という発言もある。彼は2人の理事の権限を一時停止し、「FIFAでは決して不正が行われないよう」、組織内の贈収賄の調査を行うと誓っている。

 しかし、22年の開催国にカタールが選ばれたのはFIFAの体質に問題がある証拠ではないか。酷暑のカタールで夏にW杯を開くことには無理がある。FIFAは開催時期を冬に移すことも検討しているが、カタールは冷房完備だから心配ないとしている。

 気候条件の問題だけでなく、選考の過程にも疑念がある。今はブラッター自身も、決定を見直す可能性を排除すべきでないとしている。

女性とゲイへの差別発言

 ブラッターは常に、自分は人道主義者でフェアプレーの守り神だと称してきた。カタールでの開催に疑問を呈する声が出ても、「先進国の傲慢だ」と言い放ってかわしてきた。

 この男に、差別的な発言を非難する権利はない。彼自身、偏見に満ちた発言を繰り返してきたからだ。女子選手は「ぴったりしたショートパンツをはき、襟ぐりの深いシャツを着るべきだ」と語ったこともある。

 カタールで同性愛が禁じられている点については、W杯開催中、ゲイのサッカーファンはセックスを「しないほうがいい」とも発言している。

 ブラッターはノーベル平和賞を欲しがっているらしい。受賞はあり得ないことではない。これまでも何人もの悪党がメダルをもらっているのだから。

 それに、彼は世の中に1つ貢献もしている。「透明性」という言葉のむなしさを世界に知らしめた点だ。FIFA本部のおしゃれなガラスのビルには陽光が差し込み、腐敗を照らし出しているが、それでも彼が腐敗追放に動きだす気配はない。

 どれほどひどい腐敗であっても、どれほど権力を乱用する指導者であっても私たちはすぐに慣れて、許してしまう。この事実を、ブラッターは本能的に知っているらしい。

(筆者はニュー・リパブリック誌の編集者で、『サッカーが世界を解明する』の著者)

[2011.6.22号掲載]
フランクリン・フォア


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