企業の継続的な成長に求められる、働く女性の多様なロールモデル
ニューズウィーク日本版 / 2015年6月5日 11時47分
ただし、問題は出産前後だけではない。幼稚園や小学校に進めば、入学式や保護者会など、平日に保護者の参加が必要なイベントが増える。ボルテージでは、子供の学校行事に参加するために年3日の有給休暇を付与する「チャイルドサポート休暇」を用意、もちろん父親も取得できるという。働く女性にとっては、父親の積極的な育児参加も重要なサポートになるからだ。
今の成熟社会で、家庭や家族を犠牲にしてまで働かなければならない職場環境は間違っていると東副会長は断言する。「家族での時間を大切にしてほしい」という考え方は、同氏が家族とともに住むサンフランシスコ(シリコンバレー)の風潮にも重なる(同社は2012年にアメリカに開発拠点を設立している)。サンフランシスコのオフィスでは、男性スタッフが「妻が体調を崩したので、病院に付き添う」と休暇を申請することも当然のようにあるという。雇用する側として、カリフォルニア州の被雇用者を保護する制度(福利厚生や産後社員への職場環境など)はかなり手厚く、特にシリコンバレーでは、社員に良質な労働環境を提供することが、結果として企業の永続的な成長につながるという考えが浸透していると感じるそうだ。
子育て世代の女性にとって、「長く働く」ということは重要なテーマである。「均等法第一世代」として就職した女性たちの多くが結婚・出産をきっかけに離職しており、ロールモデルとなる女性が少ないからだ。出産や育児、介護などの個別の事情にも柔軟に対応できる仕組みがあれば、「多様なロールモデル」は自ずと育っていく。実践を重ね、「前例がない」という後ろめたさから解放された世代こそが、日本の「男女共同参画社会」を次のステージへ導いてくれるはずだ。
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