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カザフをにらむ孔子学院が、中華思想対イスラムの発火点となる

ニューズウィーク日本版 / 2015年6月15日 11時46分

 ナザルバエフは新疆側で暮らす同胞たちの境遇に目を光らせている。中国政府の高圧的な民族政策が場合によっては民族の新たな大移動を触発する危険性を帯びているので、カザフスタン政府も神経をとがらさざるを得ないからだ。

儒教は伝統的な境界線だった万里の長城を越えるか

 孔子に源を発する儒教の思想は歴史的に万里の長城の最西端、嘉峪関(かよくかん)を越えたことはなかった。長城は儒教とイスラムとの境界線でもあった。一度だけ、中国の為政者たちは東トルキスタンで儒教を強制したことがある。19世紀後半にムスリムたちが清朝に対して大反乱を起こし、鎮圧された後のことである。湖南省出身の中国人軍閥が儒教でもってトルコ系住民たちを中華の臣民に改造しようと試みたが、猛反発を受けて失敗に終わった。

 今日においても、新疆ウイグル自治区のウイグル人とカザフ人が最も抵抗しているのは中国への同化だ。水と油のように混合不可能な儒教思想とイスラム。孔子学院を武器に中華思想をイスラム圏へ広げようとする野望は、新たな火種になる可能性が高い。

[2015.6. 9号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)


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