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ギリシャが狙う「アイスランド型デフォルト」とは何か

ニューズウィーク日本版 / 2015年6月17日 18時4分

 ギリシャの与党・急進左派連合(SYRIZA)内の極左グループが、デフォルト(債務不履行)と国内銀行の国有化を画策し始めた。

 極左「左翼プラットフォーム」のメンバーが、数日内に「アイスランド型デフォルト」を提案するという極秘プランを、英紙デイリー・テレグラフが報じた。同案は、SYRIZAの総議席数の5分の1にあたる30人超の議員の支持を得ているという。

 アイスランドでは2008年、国内銀行がGDP(国内総生産)の10倍にも膨らんだ対外債務の返済に窮し、国家破綻に陥った。しかし、そこからアイスランド経済は急回復し、2011年以降は毎年プラス成長を遂げている。今年の経済成長率も3%に達する見込み。ギリシャもこれを真似よう、というわけだ。

アイスランドとは事情が異なる

 もしギリシャがアイスランド型デフォルトを望むなら、間違いなくユーロ圏からは離脱して、ユーロ以前の自国通貨ドラクマに復帰することになる。

 ECB(欧州中央銀行)に代わる独自の中央銀行を創設し、不良資産も買い取らせる。いわゆる「バッドバンク」だ。汚い物も中央銀行に預けてしまえば、市場の不安要素は取り除かれ、金融システムも正常化する、という寸法だ。

 だが、アイスランドとギリシャの間には大きな違いがある。アイスランドには、もともと独自通貨のアイスランド・クローナがあった。輸出競争力を高めるために、通貨の一層の切り下げという手が使えたのだ。

 アイスランド・クローナは今でも金融危機以前の水準より30%安く、輸出は2007年末より10%増えた。ギリシャと同じく重要な産業である観光は特に好調で、2008年から2014年にかけて外国からの訪問者数は30万人増加した。

財政緊縮が不要になるわけではない

 だが、アイスランド型デフォルトをしたとしても、ギリシャに厳しい財政緊縮が必要なことには変わりがないと、ロンドンの政策シンクタンク「オープン・ヨーロッパ」の共同ディレクター、ラウル・ルパレルは言う。

「アイスランドも相当の緊縮をやった」と、ルパレルは言う。「デフォルトと通貨切り下げの他に、緊縮策もやったことを忘れてはならない」

 ギリシャのアレクシス・ツィプラス首相は、IMF(国際通貨基金)などの債権団との交渉でぎりぎりまで粘り、賃金と年金の削減要求を突っぱねることで党内の結束を固めようとしてきた。そこへアイスランド型デフォルト案が出てくれば、党は分裂の危機に陥りかねない。

 ギリシャは今週もう一度、債権団との交渉のテーブルにつく。現在の緊急支援の期限は今月末まで。そこで問われているのはデフォルトのやり方ではなく、IMFから追加支援を引き出すための改革案を示すことだ。

コナー・ギャフィー

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