中国鉄道、南米上陸の皮算用
ニューズウィーク日本版 / 2015年6月22日 10時59分
南米横断鉄道は「中国と南米諸国の関係の試金石だ」と、ギャラガーは言う。「環境への悪影響を最小限に抑え、地域コミュニティーの意向を計画に反映させることができれば、高速鉄道はすべての当事者に恩恵をもたらすが、その正反対の結果になる可能性もある」
環境保護団体や市民団体は、早くも警告を発している。計画されているルートは、アマゾンの熱帯雨林を突っ切り、先住民の居住地域を通るからだ。「過去にブラジルで実施された大規模インフラ事業の例を考えれば、今回の計画がブラジルに好ましいものとは到底言えない」と、
ビジネス・人権資料センター(ブラジル)の研究員ジュリア・メロ・ネイバは言う。
ブラジルで激しい反発を招いた大規模インフラ事業としては、北部パラ州のベロモンテ水力発電ダム計画がよく知られている。ダム建設に伴う立ち退きについて事前の相談がなく、補償も不十分だとして、先住民が強く抵抗した。その結果、計画に大幅な遅れが生じ、莫大な予算が無駄になった。政府に対する地域コミュニティーの信頼も損なわれた。
経済減速で両国に焦り
昨年12 月には、中国系香港企業の資金拠出により、中米のニカラグアで大西洋と太平洋を結ぶ運河の建設が着工した。20年の開業を目指しており、アメリカの影響が強いパナマ運河を上回る規模の巨大運河になる見込みだ。しかしこのプロジェクトも、土地の権利と環境破壊の懸念をめぐり激しい反発を招いている。
もちろん、ニカラグア運河と南米横断鉄道を同列に論じるべきではない。南米横断鉄道計画は、国外でのインフラ事業に豊富な経験を持つ中国政府が正式に支持しており、既存インフラとの競合関係もない。それでも、中国とブラジル、ペルーの政府が環境と人権への配慮を怠れば、ニカラグア運河やベロモンテ水力発電ダムのように猛反発を買いかねない。計画が具体化するにつれて反発はさらに強まるだろうと、ネイバは予測する。
ただし、人権団体や環境保護団体の声が反映される可能性はあると、ネイバは言う。「中国はこれまで多くの国で同じようなプロジェクトを行い、地域コミュニティーや環境への配慮を怠って反発を招いてきた。今回の鉄道計画では、市民団体が求めれば、あらゆる段階で計画に関与することができるかもしれない」
ブラジルとペルーの両政府の出方も注目する必要がある。経済が減速し、中国からの需要も縮小している状況で、「両国にはやや焦りが見られる」と、ギャラガーは言う。「焦るとずさんな行動を取りがちだ」
鉄道は長期にわたるインフラ事業だ。すべての当事者が長い目でものを見て判断を下すべきだろう。
[2015.6.16号掲載]
ブリアナ・リー
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