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ナチスをめぐるロシアとドイツの歴史問題

ニューズウィーク日本版 / 2015年6月25日 17時3分

 ナチス政権下で甘い汁を吸っていたドイツの企業は、ロシアの消費者にブランドの歴史が分かるよう、広告などでその事実を明らかにしなければならない--ロシアの連邦議会下院にそんな法案が上程された。

 ロシアではナチスのシンボルの使用は禁止されている。公共の場で使用すれば罰金が科される。

 ウクライナ危機をめぐりヨーロッパとの関係が悪化すると、ロシアはすぐさまヨーロッパの「過去の過ち」を声高に批判し始めた。下院では、ドイツが第2次大戦中にソ連に及ぼした損害を算定し、4兆4700億ドルの賠償金の支払いを求める動きも進んでいる

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの現政権を支持する人々をネオナチ呼ばわりし、ヨーロッパ各地でネオナチが急速に台頭していると警告してきた。

 下院に提出された法案は、ルフトハンザ、シーメンス、BMWなどに対し、ラジオ、テレビ、印刷媒体での広告でナチス政権に「協力した」事実を明示するよう求めている。

 この法案を提出した民族主義政党「ロディナ(母国)」のアレクセイ・ジュラフレフ議員は、ロシアのラジオ局ガバリット・モスクワに対し、他にも大手小売りグループ、メトロ傘下のメトロキャッシュアンドキャリーやコカコーラなどが対象企業のリストに入っていると語った。

「われらが同胞の血の犠牲に乗じて巨利をむさぼった企業、言い換えれば、ファシスト政権に協力した企業は、少なくともその事実をロシアの顧客に知らせる義務を負う」と、ジュラフノフは語気を強めた。

 ロシアの日刊紙イズベスチヤの報道によると、法案は明示の仕方を詳細に定めているという。

 ナチス政権と「商業的なつながり」があった企業は、ラジオ広告を出す場合、その事実を告げる3秒以上のメッセージを入れなければならない。テレビ広告ではメッセージの長さは5秒以上で、それに伴う画面上の表示は画面全体の少なくとも7%を占めなければならない。

 印刷媒体やオンラインでの広告では、広告スペース全体の10%以上を占めるボックスを設けて、ファシスト政権とのかかわりを明らかにすることが求められる。

「われわれの歴史が忘れ去られないよう、若い世代に20世紀に起きたこと、今日ロシアでビジネスを行っている企業がナチス第3帝国に積極的に協力し、兵器や飛行機をつくるなど、わが国の人々を害する製品を製造していたことを思い出させ、知らせる必要がある」と、ジュラフレフ議員はイズベスチヤに語った。

 その後ガバリット・モスクワは、14年に公開された連邦議員の資産報告書をもとに、ジュラフノフはメルセデス・ベンツML63に乗り、夫人はBMWのX3に乗っていることを明らかにした。

 ジュラフノフの広報担当はガバリット・モスクワに対し、ジュラフノフはすでにメルセデス・ベンツを「手放し」、今はチェコ産のシュコダに乗っていると伝えたが、夫人がBMWを手放したかどうかについては何もコメントしていない。

 ロシア下院では、ドイツに対する賠償金の支払い請求に加え、89年の東西ベルリンの統一を西側による「併合」と公式に定義する法制化の動きもある。

ダミアン・シャルコフ

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