1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

明治日本の産業発展にまつわる「残酷」をひも解く

ニューズウィーク日本版 / 2015年7月6日 19時0分

 敗戦からの復興を遂げ、1964年開催の東京オリンピックを控えて、高度成長の道を登りつつあった日本。その時代の空気に逆行するかのように、日本の近世、近代、現代の民衆の歴史を「残酷物語」と銘打って明らかにしたのが『日本残酷物語』だった。

 中心人物は、民俗学者の宮本常一と編集者の谷川健一。第一部『貧しき人々のむれ』の巻頭に谷川が記した「刊行のことば」は、同シリーズの刊行意図を明確にいい表している。


 これは流砂のごとく日本の最底辺にうずもれた人々の物語である。自然の奇蹟に見離され、体制の幸福にあずかることを知らぬ民衆の生活の記録であり、異常な速度と巨大な社会機構のかもしだす現代の狂熱のさ中では、生きながら化石として抹殺されるほかない小さき者の歴史である。民衆の生活体験がいかに忘れられやすいか――(10ページより)



 本書では、当時の環境下における宮本や谷川の思いと、そこを起点とした編集現場のサイドストーリーを交えながら、『日本残酷物語』がなぜ生まれたのかを明らかにしている。

 つまり軸をなしているのは"裏話"であり、悲惨なエピソードが羅列されているわけではない。しかし、だからこそ逆説的に、『日本残酷物語』の存在価値が浮かび上がっている。

 まずはここを起点として、現在は「平凡社ライブラリー」から発売されている『日本残酷物語』を読んでみるのもいいかもしれない。



『『日本残酷物語』を読む』
 畑中章宏 著

印南敦史


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください