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世界を食らうテクノロジー(2/2)

ニューズウィーク日本版 / 2015年7月14日 20時20分

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 すると、ロボットによる占領が突如あり得るように思えてきた。不可避かもしれない。テクノロジーは進歩する一方だ。より良く、速く、安く。AIのソフトウエアを動かしているコンピューターがいずれは最も優れた頭脳の人間より優位に立つ。彼らは人間の仕事をすべて取り上げるのか? 我々を役に立たないお荷物と見なすのか? AIが導く世界は、機械には楽園だが人間には破壊的な場所かもしれない。

 そして今や我々の「つながりやすさ(コネクテドネス)」も問題として浮上している。誰のポケットにもスマートフォンが入っていて、何にでも、誰にでもアクセスができる。「つながって」「賢く」なった都市は、デジタル巣箱として交通や犯罪や開発を管理する。

 だがどこもかしこもつながったこの世界にとってより大きな脅威になりそうなのは、ハッカーだ。中国当局はホワイトハウスのシステムに侵入し、北朝鮮はソニーに侵入した。CNNはハッカーがWi-Fiを通じていかに航空機をコントロールできるかを報道し、一部の専門家はスマートシティーのセキュリティーが破られることを案ずる。

 もし都市のシステムに侵入されれば、シンガポールやサンフランシスコ、バルセロナのようなコネクテドネスの模範のような都市が大混乱に陥る。つい先日も、我々は自らの脆弱性を思い知らされた。テクニカルな問題のために、すべてのユナイテッド航空機が駐機させられたのだ。

ソフトウエアは金持ちにも貧乏人にも平等だ

 先月、ローマ法王(教皇)フランシスコは突如、こうした議論に割って入った。「人々はもはや幸福な未来を信じていないようだ」と、有名な回勅に書いた。「彼らはもはや、今の世界の状況や技術的能力からはより良い明日を信じられなくなっている。科学や技術の進歩は、必ずしも人類や歴史の進歩と同じではないという意識が高まっている」

 終末論者はひどく間違っているのかもしれない。実際、AIやソフトウエア、遺伝子組み換え技術などを進化させ導入する以外に、2025年には80億人に膨らむと予想される人間を養う方法はない。中間所得層が割りを食っている間にも、技術は生活の質を向上させているという証拠はいくらもある。スマートフォンの無料アプリでどれほど多くのことができるか考えてみるといい。10年前に同じことをしたら大金がかかったはずだ。ソフトウエアは富裕層のためだけだけでなく、我々にも平等に安く優れたサービスを提供している。

 結局、重要なのは問題をどう認識するかだ。ハイテク産業は、燃え広がる山火事の匂いに気づくべきだ。テクノロジーはかつて正義の味方だった。だがこれからは、巨大石油会社のPR担当と同じぐらいの逆風に立ち向かうことになるだろう。どんなに評判を下げたところで、人々がガソリンを買うことや化学製品を買うのを止めるわけではないが、石油産業はとうの昔に地球を汚染する悪党というレッテルを貼られてしまった。映画では、石油王は決まって悪役だ。こうした評判は、新入社員の質や政府からの扱いや特定の人脈に招かれるかどうかをも左右する。

 ハイテク産業は、どうすれば楽観的な物語をもう一度語れるようになるかを考えるべきだ。誰も耳を傾ける人がいなくなる前に。

ケビン・メイニー

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