安倍談話の「中道シフト」はホンモノか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年8月18日 11時25分
さらに言えば、アメリカの連銀が利上げを見送るようですと、円高圧力が高まる中「流動性供給からの出口戦略」が見えなくなる危険、さらには2017年の消費税率アップをどう成功させるかといった課題もあり、イデオロギーで国論を分裂させているヒマはないと思います。政権にとって「中道シフト」というのは、当然過ぎるほど当然のことだと思います。
1つだけ気になるのは、「退任後の変節」です。ここ数十年、総理経験者が官邸で指揮を取っている時には「現実と向き合っていた」にも関わらず、退任後は「一方的なイデオロギーの発信」に逆戻りしてしまう例が余りにも多いからです。
安倍首相自身にしても、第一次政権の際にはワシントンで「歴史修正主義者ではない」ことを必死に弁明しておきながら、一旦退任した後は相当に右のイデオローグ的な言動に逆戻りしています。
今回はこれで「中道シフト」して、仮に2018年まで「完走」できたとしても、あるいはそれ以前に退任したとしても、官邸を離れた後に再び偏ったイデオロギーの発信を再開し、例えば自身が発表した「談話」の精神を自分でダメにするというような可能性はゼロではありません。
先の話になりますが、それだけは避けていただきたいと思います。タダでさえ「軽く」なっている「総理経験者」の重みが、それでは、本当に吹けば飛ぶようなものになってしまうからです。
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