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テスラが参入する家庭用蓄電池 ライバル候補も続々名乗り

ニューズウィーク日本版 / 2015年8月27日 17時0分

 米電気自動車メーカーのテスラモーターズを率いるイーロン・マスクCEOが、今年3月末に「車ではない新たな製品ライン」を披露すると予告。1カ月後に発表したのが、家庭向け、企業向け、電力会社向けそれぞれの蓄電池で構成される「テスラ・エナジー」だ。

 そのうち、「パワーウォール」と呼ばれる家庭向けの蓄電池は、ソーラーパネルで発電した電力や電気料金の安い時間帯の電力で充電し、夜間に給電することを想定している。設置業者向けの販売価格は、10kWhモデルが3500ドル、7kWhモデルが3000ドル。これは現在市販されている蓄電池の半額をさらに下回る衝撃的な価格設定だとして、主要メディアで大々的に報じられた。
 
 発表から3カ月余り、8月上旬に行われた第2四半期決算報告会見の中で、マスクCEOがテスラ・エナジーに言及した部分を、米フォーチュン誌サイトの記事がまとめている。それによると、パワーウォールと、企業向けの「パワーパック」を合わせた予約注文は10万件に達し、10億ドルの売り上げに相当するという。あまりの需要に、2016年中に製造できる分まですでに「売り切れ状態」としている。

 ただし留意すべきは、先述の価格には、直流を交流に変換するインバーターと、業者による設置費用が含まれない点だ。インバーターはたいていソーラーパネルとセットなので、すでにパネルを設置済みならいいが、パネルなしで電気料金の安い時間帯に充電するシステムを組もうとすると、インバーターを別途購入することになる。

 こうした状況で、テスラに続けとばかりに、低価格と設置の容易さをアピールする新興の蓄電池メーカーも現れ始めた。

 サンディエゴ・ユニオン・トリビューンが今月20日の記事で取り上げた、地元の新興企業オリソンが発売する「タワー」(2kWh、1995ドル)と「パネル」(2kWh、1600ドル)は、室内に置けるインテリア風のデザインと、購入者が自ら設置できる手軽さが売りだ。いずれもLEDライトを搭載し、据え置き型室内灯に似た外観のタワーはブルートゥース接続スピーカー、携帯電話などを充電できるUSBポートも備える。1100ドルの追加バッテリーを増設して組み合わせると、合計4900ドルで8kWhの蓄電池システムを構成できるという。




 ロンドンに拠点を置く新興企業パワーボールトも、低価格の家庭用充電池市場への参入を目指す。PVマガジンの記事によると、同社はクラウドファンディングで70万ポンド(約110万ドル)の調達に成功。2kWhのシステムを2000ポンド(3140ドル)、4kWhのシステムを2800ポンド(4400ドル)で売り出す計画で、価格にはインバーターも含むシステム全体が含まれ、1人の技術者が1時間足らずで設置できるという。

 コストパフォーマンスの点では、オリソンのほうがパワーボールトよりも有利だが、いずれも室内置きで楽に導入でき、ソーラーパネルと組み合わせなくても追加費用が発生しないことから、集合住宅や賃貸物件に住む人でも検討しやすいのではないだろうか。テスラの製品が市場に出始めれば、既存のメーカーも対抗せざるを得なくなるし、価格、性能、使い勝手の点で、家庭用蓄電池がこの1〜2年で大きく動くのは間違いないだろう。


[執筆者]
高森郁哉
米国遊学と海外出張の経験から英日翻訳者に。ITニュースサイトでのコラム執筆を機にライター業も。主な関心対象は映画、音楽、環境、エネルギー。

高森郁哉(翻訳者、ライター)

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