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消えたMH370便、謎は深まるばかり──史上最大級の航空ミステリー

ニューズウィーク日本版 / 2015年9月1日 16時3分

 7月下旬、インド洋に浮かぶレユニオン島の海岸に、航空機の残骸が打ち上げられた。ボーイング777型機の翼の一部と思われた。2014年3月8日に乗客乗員239人を乗せたまま行方不明になったマレーシア航空(MH)370便と同じボーイング777型機の一部のようだった。MH370便が消息を絶った地点から約6,100キロも離れていたが、機体(少なくともその一部)が見つかったのではないか、という噂が飛び交った。

 数日後、マレーシアのナジブ・ラザク首相は噂は真実だと発表した。8月上旬に記者会見をしたナジブは、「航空機が行方不明になってから515日後の本日、沈痛の思いで皆様に申し上げねばならない。専門家で構成される国際チームにが、レユニオン島で見つかった機体の一部はMH370便のものであると最終的に断定した」と述べたのだ。

 マレーシア航空もこの調査結果を「大きな前進」と呼び、この残骸がフラッペロンであることを確認した。飛行機の翼の一種だ。

 航空機の残骸はさらなる分析のためにフランスの調査チームのもとに運ばれた(レユニオン島はフランス領のため)。今から約1カ月前には本格的な調査が始められ、すぐにも結果が出るはずだった。しかし、それから数週間を経た今もなお、成果はない。

同一の機体のはずなのに翼が一致しない

 CNNによると、フランスの調査は行き詰っている。マレーシア政府と航空会社の双方が、この残骸はMH370便のものだと断定しているにもかかわらず、それが事実であることを立証できないという。

 フランスの調査チームは、問題のフラッペロンの製造に関わるスペイン企業に協力を仰ぎ、それがMH370便のものであることを立証しようとした。だが報道によれば、スペイン企業は立証に失敗、チームは調査を断念した。シリアルナンバーを刻印したプレートが、翼から失われていたのだ。

 ただでさえ神経を消耗するこのミステリーには、さらに奇妙な点がある。8月上旬のニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、MH370便の整備記録は、発見された翼とMH370便の翼が一致しないことを示唆しているという。

 航空機の専門家でMH370便事故をずっと調べてきたジェフ・ワイズはこう説明する。「航空機の部品は精密に設計されている。何らかの修正が加えられれば、整備員が必ず詳細な記録を取る。少しでも違いがあれば、それは『厳密には一致しない』ではなく『一致しない』ということだ」

 残骸に付着していたフジツボも謎だ。漂着した翼の写真にはフジツボが写っているが、ワイズによると、このようなフジツボは通常、沈んでいるものに付着する。「フジツボは水中でしか生存できないため、付着するにはかなりの長時間、沈んでいなければならない」。論理的に考えれば、この残骸は海面を漂流していたのではなく水中に沈んでいたはず。それにもかかわらず、自力で海面に浮上して移動してきたことになる。

 ミステリーはまだ続く。世界で行方不明になっているボーイング777型機はMH370便一機だけ。そして今回見つかった残骸が、ボーイング777型機のものであることも確実なのだ。

ポリー・モセンズ

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