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実は結構つらい? ジェット族の意外な現実

ニューズウィーク日本版 / 2015年9月15日 16時30分

 毎週のように遠い街に出張するコンサルタント、自家用ジェット機で各地の会議に乗り付けるエグゼクティブ......。世界を飛び回るジェット族は、成功と人脈の広さとステータスの象徴だ。

 しかし華やかさとは裏腹に隠れたリスクも多いらしい。

 英サレー大学のスコット・コーエンとスウェーデンのルンド大学・リンネ大学のステファン・ヨスリン教授は、航空機の頻繁な利用に関する数々の研究を検証・総括し、論文にまとめた。それによれば「現代では活発に移動することのメリットが美化される一方、デメリットの大部分は見過ごされ、軽視され、見えなくなってさえいる」。

 現状では長距離フライトの大部分を比較的少数の「モバイルエリート」が占めていると、論文は指摘する。高所得でいい家に住み、高度な医療を受けられる人々だ。例えばフランスでは、国民全体の移動距離の半分は人口の5%の人によるもので、スウェーデンでは国民全体の海外旅行件数の約4分の1は人口の3%の人によるものだ。出張は男性が多く、アメリカでは02年に出張した国民の77%が男性だった。

拭いきれない孤独感

 航空機を頻繁に利用することの影響としては生理的なもの、心理的・感情的なもの、社会的なものの3種類が考えられる。

 生理的影響の1つは時差ぼけ──生活リズムと生体リズムのずれによる心身の不調だ。時差ぼけは疲労や胃腸の不調を招き、老化と免疫システムに関係する遺伝子に影響し、脳卒中や心臓発作のリスクを増大させる。客室乗務員などの慢性的な時差ぼけは、記憶障害といった認知障害を引き起こす恐れもある。

 エコノミークラス症候群のリスクも増大する。機内は換気が不十分で細菌も多い。長距離便を頻繁に利用する人は宇宙からの放射線も大量に浴びることになる。例えば民間旅客機の乗務員は原子力発電所の作業員を上回る量の放射線を浴びるという。さらに出張中は普段より運動不足になり、食事も偏りがちだ。

 出張は心理や感情にも影響する。準備や手配の段階からストレスが忍び寄ることもある。出張でも仕事の量が減るわけではなく、出張中に仕事がたまることで余計なストレスを生みかねない。フライトの遅延や時間の制約があるなか、慣れない土地でうまくやらなければならないというプレッシャーが、不安やストレスを生むかもしれない。

 全体として、長距離を飛び回る生活は混乱や孤独感を招きかねない。家を空けることが多くなれば、出張する側も残された家族も孤独感を味わう。

 留守がちだと、家族や友人やコミュニティーとの関係もぎくしゃくしかねない。ある研究によれば、親が出張で長く家を空ければ子供の素行に悪影響が出る可能性がある。出張者の大部分は男性なので、女性の家事負担が増える。出張の合間には疲れを癒やしたり家族と過ごしたりすることが多いので、友人や社会とのつながりは薄れやすい。

 世界を飛び回るのはエリートだけではなくなってきていると、コーエンらは指摘。それに伴ってリスクも社会全体に広がりかねないと警鐘を鳴らしている。


[2015.9. 8号掲載]
Albert Gea-REUTERS

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