「投石」には「銃」で対抗?──イスラエルの汚い戦争
ニューズウィーク日本版 / 2015年9月15日 16時26分
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、エルサレムとその周辺で頻発するパレスチナ人による「投石と火炎瓶攻撃」に対する「戦争」について協議するため、火曜夜にも緊急会議を召集する。治安当局者が中心に集まって、パレスチナ人「投石者」への対抗策を話し合う。
緊急会議のきっかけは、エルサレムのアルノナ地区で13日の日曜深夜に、投石が原因とみられる交通事故でイスラエル人の死者が出たこと。容疑者は、東エルサレムに住むパレスチナ人と見られている。
現地からの報道によると、東エルサレム(エルサレム内のパレスチナ人居住区)では、イスラエル人とパレスチナ人の緊張が高まっている。
裁判抜きの行政拘禁も検討
「ネタニヤフ首相は、石や火炎瓶をイスラエル市民に投げつける行為を極めて重く受け止めており、刑罰と法執行の強化など、あらゆる策を講じてこの事態に立ち向かうつもりだ」と、あるイスラエル政府関係者は本誌に語った。
ネタニヤフは今月に入り、パレスチナ人投石者と対峙するイスラエル治安部隊に発砲を許可することも視野に入れ、対抗手段の修正を検討すると発表していた。
先週末には、投石者に対する処罰が手ぬるい裁判官を昇進させない、という対抗策の提案を一蹴。投石者はそもそも裁判に値せず、「行政拘禁」で対処すべきだと語った。行政拘禁とは、起訴や裁判の手続きを踏まずに容疑者を拘束できる法的措置で、イスラエル国内でも論争の的になっている。
イスラエル議会は今年7月、投石者を禁固20年の刑に処すことができる法案を可決している。イスラエルの刑務所で拘束されているパレスチナ人を支援する「パレスチナ囚人協会」のカドゥラ・ファレス代表は、この法律を「人種差別的で憎むべきものだ」と非難した。
投石は以前から、イスラエル当局との武力衝突においてパレスチナ人が頻繁に用いる攻撃手段。1980年代後半の第1次インティファーダ(パレスチナ人の抵抗運動)では、投石は、イスラエルのヨルダン川西岸占領に抵抗するパレスチナ人を象徴する武器になった。
ジャック・ムーア
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