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同性婚を認めない事務官が、一時収監された経緯 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2015年9月15日 17時0分

 さてこのニュースですが、何点か説明が必要な点があると思います。今回は、Q&A形式で、疑問にお答えしようと思います。

(Q)最高裁の憲法判断を無視するのは、公務員の遵法義務にも反するでしょうし、これだけの混乱を招いたにも関わらず、デービス氏はどうしてクビにならないのでしょうか?

(A)州によって制度が異なるのですが、少なくともケンタッキーの場合は、こうした事務官は公選なのです。選挙の洗礼を受けているわけで、罷免手続きというのはあるのですが、この程度(?)のことではクビにできないのです。

(Q)それにしても、堂々と拘置所に入るというのは不思議です。回避できなかったのでしょうか?

(A)アメリカの場合、主義主張を通すために拘置所に入るというのは、別に過激なことではありません。例えば教員が違法なストを行って逮捕された際には、胸を張って収監され、それを保護者たちが(待遇が改善されれば良い教育が期待できるので)デモを行って支援するというのは「よくある」話です。拘置所に入ることが「恥」だとか「汚点」という意識がないのです。

(Q)共和党のハッカビー候補が応援に来たということは、彼女は共和党員なのですか?

(A)実はれっきとした民主党員で、2012年に事務官選挙に出る時も、民主党の「予備選」を勝ち抜いているのです。南部の場合、宗教保守派というのは、以前は民主党だったのですが、それが共和党支持にシフトしたという歴史があります。彼女の場合は、シフト前の「宗教保守派は民主党」という時代を引きずっていることに加えて、官公労など支持団体の関係で民主党支持なのだと思います。

(Q)ハッカビー候補などは、大統領になって最高裁判決をひっくり返したいのでしょうか?

(A)時代の流れ、そして最高裁判決の重みを考えると「判決をひっくり返す」のは不可能でしょう。では、どうしてデービス氏の支援をしたのかというと、あくまで宗教保守派として、仮にジェブ・ブッシュ候補のような「リベラル派」が大統領候補になった際に、保守派の票の取れる候補として「副大統領候補」に指名されることを狙っているのだと思われます。

(Q)彼女の目的は具体的に何なのですか?

(A)本当は、同性婚を妨害したいのでしょうが、それは不可能でしょう。ですから具体的には、担当官として「同性カップルの婚姻証明書」に自分のサインが残るのがイヤだということだと思います。裁判所は「部下の署名を妨害しないように」という命令を出しているのですが、これも、自分がイヤな場合は、部下(副事務官など)に署名させて「トラブルを起こさないように」という一種の妥協を促したということだと思います。

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