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あの習近平もかすんだローマ法王訪米の政治力

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月2日 17時20分

 ローマ法王(教皇)フランシスコが、今月19~27日にキューバとアメリカを歴訪した。法王というとお飾りのアイドルのように思う人もいるが、法王の率いるローマ・カトリック教会は中世西欧を束ねた往時の力こそないものの、今でも全世界に12億人の信者を抱え、180カ国と外交関係を有し、106カ国に大使を常駐させている。

 今年、アメリカとキューバは54年ぶりに外交関係を復活させたが、その過程でカトリック教会は自分の「外交力」を使って仲介の労を取った。

 米キューバの国交正常化とともに、法王の訪米もまた大きな意味を持つ。米大統領選が始まっているからだ。アメリカでは、これまでプロテスタントが主流で、カトリックは傍流に甘んじてきた。19世紀後半にアイルランド人、イタリア人などのカトリック教徒が大量に流入して以来、比較的貧困な層の宗派と見なされ、現在は中南米からのヒスパニック系移民の宗派ともなっている。

 昨年、カトリックはアメリカで成年人口の20.8%を有し、単一宗派としてはプロテスタントの福音派の25.4%に次ぐ。

 近年カトリックはヒスパニック系移民の大量流入にもかかわらず、米総人口の中での比重を下げた。しかもヒスパニック系の間でさえ若年層を中心に福音派教会に宗派替えする例が増え、信者の老齢化を招いている。最近では聖職者による性犯罪の例も明るみに出た。カトリック教会にしてみれば、ここらでアメリカの教会にテコ入れをしておきたかったことだろう。

 カトリック信者の間では、民主、共和両党の支持者の比率が拮抗している。民主党のオバマ米大統領としては、ローマ法王を自らの民主党の側に引き付けておく意味は大きい。自分の後の大統領が共和党になると、国民皆保険を目指した医療保険制度改革(オバマケア)などの業績をずたずたにされ、歴史から名を消されてしまうからだ。

大統領選を左右する移民

 法王はアルゼンチン出身でスペイン語を話す。アメリカのヒスパニック系の好感を得ることもできるだろう。ヒスパニック系は12年の大統領選挙では有権者の10%を占め、民主党支持者が共和党支持者を44ポイントも上回っていた。ヒスパニック系はアメリカのカトリック人口の約35%を占める。

 その中で、キューバは面白い要素だ。キューバ系移民は約200万人で、多くはフロリダ州に住む。フロリダ州の人口の6%がキューバ系移民だ。気候が温暖なフロリダ州は全国から年金生活者が多数移住してくるため人口が多く、大統領選挙人の数も多い(16年大統領選では全国538人のうち29人)。

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