ロシア参戦で錯綜するシリアの空爆地図
ニューズウィーク日本版 / 2015年10月2日 17時45分
ロシア国防省は30日、シリア領内で空爆を開始したと発表、米当局もこれを確認した。4年半に及ぶシリア内戦には既に多くの国々が関与しているが、ロシアの参戦により事態はますます錯綜してきた。
米欧を中心とした有志連合の空爆の標的はISIS(自称イスラム国、別名ISIL)だが、一方ではシリアのバシャル・アサド独裁政権と戦う穏健派の反体制派への軍事支援も行っている。ロシアの標的は「テロリスト」ということになっているが、それが誰を指すのかは明らかにしていない。ISISが標的であれば問題はないが、反体制派を攻撃して盟友アサドの延命を図り、シリア国内にもつ軍事施設など自国の権益を守るのがロシアの目的なら、有志連合とまともにぶつかり合うことになる。
先週から空爆に加わったフランスも合わせると、今年シリアを空爆した国は13カ国になった。どの国がシリアの誰を攻撃しているのか、その思惑は何なのか、国別に整理してみよう。
ロシア
ウラジーミル・プーチン大統領は議会の承認を受けてシリア空爆に踏み切った。ホムス、ハマ、ラタキアが攻撃されたと、シリアの情報筋がAFPに語っている。反体制派組織「シリア市民防衛団」によると、ホムス市内では子供3人を含む民間人33人が死亡した。
ロシア国防省筋は空爆の標的はISISの拠点だとBBCに語ったが、米当局によると、ロシア軍はISISの支配地域には攻撃を行っていないという。シリアの反体制派の拠点を集中的に攻撃したとみられる。標的には穏健派も含まれ、欧米が支援している組織の拠点が攻撃された可能性もあるという。ロシアがシリアの反体制派をたたき、アサド政権の延命を図るために介入したのは明らかだ。
アメリカ
米政府は昨年9月に英ウェールズで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議で多くの国々の合意をとりつけ、ISISと戦う有志連合を発足させた。米軍はイラクの基地とペルシャ湾に展開する空母から戦闘機や無人機を発進させ、ISISのインフラや戦闘員を攻撃してきた。アサド政権とシリアの穏健派の反政府組織は標的にしていない。ただし今年7月には、米軍が訓練を行っている反体制派の基地を攻撃したアルカイダ系列の武装集団アルヌスラ戦線に空爆で応戦した。
米軍の空爆の多くは、トルコ国境に近いクルド人の都市コバニに対して行われてきた。コバニは昨年10月ISISの手に落ちたが、米軍の支援を受けて、クルド人部隊が奪還に成功。その後もISISは再侵攻を試み、クルド人部隊との間で激しい戦闘が繰り返されている。ISIS掃討に及び腰だったトルコは7月末、ようやく米軍の基地使用を許可。米軍は8月、トルコのインジルリク空軍基地から有人戦闘機による空爆を開始した。
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