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「カネ不足」に悩むISISの経済危機

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月6日 18時30分

 もうじき冬を迎えるが、支配地域の住民たちは食料と燃料価格の高騰に加え、頻繁に起こる停電に悩まされている。

「ISISが支配する以前は灯油1リットルが30セント相当だったが、今では2ドルもする」と、医学生のサイードは言う。「調理用のLPガスボンベ1個は5ドルから25ドルに跳ね上がった」

 サイードによれば、ISISは「ザカート(寄付)」の名目でイスラム教徒の住民から所得の2.5%を徴収しているが、それを本来の使途である弱者救済には充てていないという。

 貧しい人々がさらに窮乏する一方で、戦闘員(外国人の割合が増えている)は比較的快適な暮らしを享受している。「外国人戦闘員は欧米式の贅沢な生活をしている」と、アフメドはモスルの状況を伝える。「5つ星のニナワ国際ホテルや逃亡した金持ちの豪邸に滞在し、医療もただで受けられる。住民は1日2時間しか電気が使えないのに、彼らは使い放題だ」

 資金の流入が減っても、ISISは戦闘員に高い給与を払い続けている。米財務省によると、最高額は一部の外国人戦闘員が受け取っている月1000ドルだ。戦闘員の給与だけで、ISISの支出は年間3億6000万ドルに上るとみられる。

 収入はどうか。米シンクタンクのランド研究所によると、ISISの昨年の収入は推定12億ドルだ。うち5億ドルはイラクの国営銀行数行を占拠して没収したカネで、1度限りしか入ってこない。

 ISISが戦闘員の給与に多額の資金をつぎ込んでいることは驚くに当たらないと、ロンドンのシンクタンク・王立統合軍事研究所(RUSI)のトム・キーティンジは言う。「今後はますます支配体制の維持が優先されるだろう。不足しがちな資金は組織の幹部と戦闘員に真っ先に分配される」

 とはいえ、支配を確立した当初「資金は潤沢にあった」と、キーティンジは付け加える。「問題はこれまでにどれだけ使い、今どれだけ稼いでいるかだ。いずれは当初の余剰分を取り崩すことになるだろう」

通貨発行を宣言するも

 経済に痛手となっているのは地元住民と外国人戦闘員の格差だけではない。ISISが女性に許可している職業は、女生徒相手の教師、女性患者相手の医療従事者、女性用品の販売員だけだ。

「私の姉妹は働けない」と、元医学生で、ラッカで反ISIS組織を設立したイブラヒム(偽名)は言う。「家に閉じ籠もる姉たちを見るのはつらい」

 ISISの経済運営が順調ではないことを物語る証拠はほかにもある。ISISは8月末、独自通貨の発行を宣言する1時間の動画を公開した。「カリフ国の勃興──ディナール金貨の復活」と題したこの動画で、ISISは金本位制を復活させ、「人々を奴隷にするアメリカ資本主義の金融制度を破壊する」と豪語している。
しかし、それからほぼ1カ月たった今も、ISISは戦闘員に米ドルで給与を支払っている。

 経済・財政運営につまずいて、ISISの支配は終焉を迎えるだろうか。そうとは限らないと、ランド研究所のアナリスト、ベン・バーニーはみる。

「ISISの支出はわずかだ。給与以外はほとんど使っていない。公共事業はほぼゼロ。福祉も1回限りのばらまきだけだ。ISISは90年代にイスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンで行ったような統治ができれば満足なのだ」と、バーニーは言う。「彼ら流の法の支配を徹底できればいい。必要としているのはインフラ整備ではなく、戦闘員と武器だ」


[2015.10. 6号掲載]
ミレン・ギッダ


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