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シリア当局者語る、「パルミラはロシアの空爆を歓迎する」

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月7日 17時43分

 本当にISIS(自称イスラム国、別名ISIL)が標的なのか、それともアサド独裁政権と戦う反体制派の拠点も空爆しているのか、賛否を呼ぶロシアのシリア空爆だが、意外な人物がこれを歓迎している。

 AFP通信によれば、シリアの国営テレビが6日、ロシアの戦闘機がシリア空軍と共に古都パルミラ付近のISIS拠点を空爆し始めたと報道。シリア文化省文化財・博物館局のマムーン・アブドルカリム局長は、ISISの手からパルミラを守るためならロシアの空爆を歓迎すると本誌に語ったのだ。

 ロシア軍は車両20両と兵器庫3カ所を破壊したと、シリア国営テレビは伝えている。ロンドンに拠点を置くシリアの人権監視団も、パルミラ周辺でISISの戦闘員15人が死亡したと発表した。

「毎週のように破壊されている。一刻の猶予もない」

 パルミラといえば、世界遺産でもあるローマ様式の都市遺跡で有名だが、ISISが5月に制圧。8月には、中心的な建造物であったバールシャミン神殿とベル神殿が爆破された。また、長年パルミラの保護活動にあたってきた高名な考古学者のハレド・アサドは、ISISに斬首され、遺跡の柱に吊るされた。

 アブドルカリムは先週末にも、パルミラの凱旋門が爆破されたと訴えていた。「まるで呪われた都市だ。パルミラからは、もう衝撃的なニュースしか出てこない。奴らの手にあるかぎり、もうおしまいだ」と、彼はロイターに語った。「これは単に無差別の破壊行為だ。イデオロギーすら関係ない。彼らは宗教とは無関係の遺跡も爆破している」



古代の美 8月の破壊行為に続き、この凱旋門も最近爆破されたとみられる(2000年撮影) Sandra Auger- REUTERS


 8月にはユネスコのイリナ・ボコバ事務局長も、テロ組織ISISによる古都パルミラの破壊は「戦争犯罪だ」と述べていた。そこへ訪れたのが、ロシア軍によるパルミラ空爆のニュースだったわけだ。

アブドルカリムは本誌の電話取材に対し「ロシアが遺跡でなくISISを攻撃するのであれば、朗報だと思う」と話した。「毎週のように新たな破壊が起こっているし、パルミラには多くの古代遺跡がある。一刻の猶予もない」

 しかし、ロシア国防省の報道官はパルミラ空爆を否定した。ロシアの国営タス通信によれば、6日の声明文で「ロシアの戦闘機が古都パルミラで空爆を行っているという外国メディアの報道は、すべて事実無根だ」と言明。「わが軍のシリアでの作戦は、人口密集地や古代遺跡の上空では行っていない」と述べている。

 パルミラを守るアブドルカリムにとって胸の張り裂けそうな日々はまだ続きそうだ。

ジャック・ムーア

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