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アメリカの大衆文化は保守的なだけに「息が長い」 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月22日 16時0分

 ちなみに日本でも期待は高いようですが、アメリカの場合は「エピソード1、2、3でシリーズのファンになった分厚い若い世代が存在する」ことと、「エピソード7を監督するJ・J・エイブラムスが作った『スター・トレック』の新シリーズの評価が日本ほど悪くない」ということもあって、この「エピソード7」に関しては、日本以上の期待の高まりとなっています。

 ところで、こうしたポップカルチャー(大衆文化)を考えると、SF映画や野球が好きというのは、いかにもアメリカらしいという印象になると思いますが、加えてアメリカのポップカルチャーの「息の長さ」をあらためて痛感させられます。

 例えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のシリーズは、第一作(1985年)から現在まで30年、『スター・ウォーズ』の場合は最初の「エピソード4」(1977年)から38年が経過しています。カブスの「呪い」に至っては70年越しの話です。

 こうした「ポップカルチャーの息の長さ」は、多分アメリカというのは保守的で、コアの価値観があまり変わっていないことが理由だと思います。野球の醍醐味、ワールドシリーズへの興味、宇宙空間への関心や時空を越えた想像力を働かせたファンタジーへの熱狂というのは、世代を超えて共通、時間が経過してもあまり変わらないのです。

 何年もかけたSFの連作(サーガ)にしても、MLBの野球にしても、世代から世代へとファンが引き継がれていくわけです。野球に関して言えば、今年はヤンキースの名捕手で名監督であったヨギ・ベラ氏が90歳で亡くなりましたが、彼の存在も世代を超えて愛されていました。

 一方で、日本の場合は、世代が変わると常に上の世代に対するチャレンジが起きて、新しいものが作られていく、そのようなカルチャーの変化のダイナミズムがあるように思います。これに加えて、新しいものが出現しても、古いものは破壊されずに維持され、文化が多様化・複雑化するというのも日本の特徴です。

 そんな日本と比べるとアメリカの文化の根本は、良くも悪くも保守的、それが「ポップカルチャーの息の長さ」の原因なのでしょう。

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