辺野古に反対する翁長沖縄知事が「変節ではない」理由
ニューズウィーク日本版 / 2015年10月23日 18時45分
また、そういう意味では、本シンポジウムを主催した朝日新聞が社説で展開している「(辺野古への基地移設は)強制的にやるべきものではない」ので「ここは一つ立ち止まって考えよう」という論にも納得できる。辺野古が唯一の解決策だなどという単純な問題ではなく、まずは賛成反対両派が「お互いの違いを知る」ことが重要だからだ。
パネル討論で、翁長氏は以下のような発言をしている。
日本という国がいかに情けない国であるか。いわゆる発展途上国でも、外国の軍隊をこんなに長く自分の国に置くところはありませんよ。(中略)そんな国は世界を見てもないと考えたほうがいいです。(中略)今のような状況であれば、日本がアジアのリーダーになることも、世界のリーダーになることも絶対にないと私は思っています。なぜなら、自分の意思を持ちきれていませんから。自分の意思がない国が、本当のリーダーになれるはずがないからです。(63~64ページ、パネル討論「いま、沖縄と本土を考える」より)
ここで翁長氏が指摘しているのは、どれだけ動いてみても、決して沖縄の問題に真正面から向き合おうとしない中央政府の不条理だ。
翁長氏と有識者たちの「生の言葉」が詰め込まれた本書には、本土にいる私たちにはなかなか見えない沖縄の現状が記されている。共感することが多く、また少なからず、自分自身の認識の甘さをも痛感させられた。だから人に伝えたいと思って、本書を知人に紹介した。すると彼は興味がなさそうに、関わりたくないといった表情で、「辺野古のことは......でも、仕方ないよねぇ......」と話題を封じた。その反応は私を落胆させもしたが、しかし充分に予測できたことでもあった。なぜなら恐らく、彼のような段階で「考えること」「意思を持つこと」を放棄している人は決して少なくないだろうと思えるからだ。
しかし、これは本質的に沖縄だけの問題ではない。大切なのは、自分の意思を持つこと。そして、そのために必要なのは真実を知ることだ。そういう意味で本書には少なからず意義があると感じた。
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『沖縄と本土
――いま、立ち止まって考える辺野古移設・日米安保・民主主義』
翁長雄志、寺島実郎、佐藤優、山口昇、朝日新聞取材班 著
朝日新聞出版
印南敦史(書評家、ライター)
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