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海賊版天国だった中国が『孤独のグルメ』をリメイクするまで

ニューズウィーク日本版 / 2015年10月30日 11時13分

『孤独のグルメ』のリメイク『孤独的美食家』の予告編


 ネットのオリジナルドラマでは、アメリカのネットフリックスやHuluが先行している。YouTubeも来年から独自コンテンツ制作を始めることが発表された。独自の進化を遂げてきた中国の動画配信サービスだが、米国発の潮流に合致した動きを見せている。世界的潮流へのキャッチアップやサービスの利便性において、日本と比べて中国ははるかに先行している。

 その一方で、いかにして収益を確保するかはいまだに未知数だ。例えばネットフリックスのような定額配信サービスだが、中国でも、インターネットテレビやセットトップボックスとのセット売りという形式で年数千円程度の会員権を販売する動きは始まっている。ただしこれはあくまで機器本体の価格込みだからできること。契約期間終了後にどれだけのユーザーが更新するかは未知数だ。正規版配信がトレンドになった後も、コンテンツは無料という海賊版が築いた価値観は残っている。大手はともかく、中小のサイトはいまだに海賊版を配信しており、有料化すればどれだけのユーザーが流出するかわからない。オリジナルコンテンツ制作という世界的潮流に乗っかる一方で、無料広告モデルを脱した課金ビジネスモデルの構築という面では大きく遅れをとっている。

 また中国ならではの政治と検閲という課題も動画配信業界に大きな影響を与えている。日本アニメと同様、米国ドラマや韓流ドラマも母国での放送と同時のネット配信が許されていたが、今春から事実上不可能となった。配信にあたっては放映許可を取得する必要があるが、許可を得るためには作品が完結していることが条件となるためだ。現在ではアニメは対象外だが、もし規制対象に指定された場合、日本アニメが中国市場に進出するルートは閉ざされることになるだろう。完結後に許可を取得して配信することは論理的には可能だが、熱心なアニメファンは待つことができずに海賊版を見ることは間違いない。

 正規版配信、オリジナルコンテンツ制作と邁進する中国動画配信業界。しかし海賊版の影はいまだに消えていない。今後も海賊版という強烈な圧力にさらされながら進むこととなるだろう。

[執筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。


高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)


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