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SEALDs時代に「情けない思いでいっぱい」と語る全共闘元代表

ニューズウィーク日本版 / 2015年11月2日 11時5分

 なお、ともすれば全共闘運動についての話に意識を奪われがちだが、同時に注目したいのが原子力発電についての記述だ。物理を勉強してきた立場から、それがいかに危険なものであるかを、わかりやすい言葉を選んで説明してくれているのである。淡々とした記述は、感情をむき出しにしたアプローチよりもずっと説得力がある。

 特に注目すべきは、原発への反対姿勢をはっきり示しているにもかかわらず、「それを残してしまい、事故を起こしてしまったのは自分たちの世代の責任だ」という意識を心のどこかに持っている点である。特に感動したのは、終章のこの部分だ。


 私たちは若い頃、戦前の人たちにたいして、なんであんな日本の戦争やファシズムを止められなかったのかと言ってきました。おなじことを私たちは、今の一〇代や二〇代の人たちに言われるのではないかと、正直、思っております。私はこの間、原発について、大きな集会や何度か金曜日の夜に国会前の行動に参加してきましたが、ときに高校生や大学生が発言しています。その人たちに言われたら返す言葉がありません。何もしてこなかったわけではないけれど、少なくとも結果的には三・一一の破局を防げなかったのであり、その点では悔しい思いもあれば、情けない思いでいっぱいです。(303ページ「おわりに」より)


 全共闘運動の渦中にいた人のなかに、ここまで言える人がいたという事実が心を打った。いや、そもそも世代で人を定義づけられるはずはないのだから、当たり前の話ではあるだろう。しかしそれでも、こうして言葉に置き換えてみせた著者の姿勢は、彼らに偏見を持っていた私を安堵させたのだ。

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『私の1960年代』
 山本義隆 著
 金曜日


印南敦史(書評家、ライター)


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