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【地図で読む】この宗教地図が間違っている4つの理由

ニューズウィーク日本版 / 2015年11月5日 16時55分

[1番目の理由]
同じ宗教の国をまとめて同じ色にしてしまうと、地図ではどの国も同じという印象を与えてしまう。ところが、同じ宗教の国でも、ある国では国民がその宗教を非常に熱心に実践しているのに対し、すぐ隣の国ではその宗教がたんなる文化遺産だったりする。たとえば、洗礼を受けた人はすべてカトリック教徒として数えられているのだが、そのなかのかなりの人は実践していない。

[2番目の理由]
国に色をつけるとき、人口密度を考慮せず、全土を同じ色にしている。たとえば、アフリカ大陸の北半分はイスラム教を示す同じ色になっているが、このなかにあるサハラ砂漠にはほとんど人が住んでいない。したがって、地図では実際とは違ってイスラム教徒が多くいるように見える。

[3番目の理由]
どの宗教も多様に枝分かれし、そこでまた変化して、違う宗派間での争いも多い。たとえばイスラム教をすべて同じ色にすると、スンニ派とシーア派の大きな違いや、この2 大宗派にもいろいろな学派があることがわからない。しかも、各学派は実践の仕方も違えば、その学派が発展した社会の仕組みも違い、学派同士で紛争していることもある。

[4番目の理由]
一つの色が示すのは「多数派」の宗教だけである。そうなると、少数派やアニミズム信仰、あるいはたんに無宗教の人たちは地図からはわからないことになる。



<上の地図 やや複雑でもより正しい地図:イスラム教の例>

 イスラム教圏を拡大したこの地図は、左ページの地図に対する批判をかわそうとするものである。国境には従わず、人の住んでいる地域だけに色をつけている。違う宗派や学派をいろいろな色で表わし、イスラム教としては一つで、聖典である『クルアーン』[「コーラン」は欧米表記に従ったもので、アラビア語音は「クルアーン」]が一つであっても、解釈や文化、イスラムの伝統はさまざまであることを示すものだ。このようにイスラム教は、ほかの宗教もすべてそうだが、ひとかたまりではない。一部の国は『クルアーン』の法律を憲法――シャリーア(イスラム法)――にまで取り入れている。

 宗教の占める位置や、宗教による束縛もまた、社会によってそれぞれ違っている。さらには、この地図では世界にたくさんいるはずの少数派としてのイスラム教徒を示していない。というのも、そういう人たちは1カ所に集中しておらず、地理的に特定することができないからである。たとえば、西欧では700 万~1000 万人、中国では、少数派とはいえ3500 万~1億6000 万人のイスラム教徒がいると言われている。中国のこの数字の開きは、情報源と統計に問題があることを示している。


知っていましたか?
エルサレムは三つの宗教の聖地である。ユダヤ教にとっては、ユダヤ人の最初の神殿が建設された街である。キリスト教にとっては、イエス・キリストの墓がある街。イスラム教にとっては、預言者ムハンマドがある夜に昇天したのがエルサレムである。


※第5回【地図で読む】人類は1987年以降、資源の「債務超過」状態にある:はこちら

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