ロシア機「爆破」情報で緊迫するシナイ半島
ニューズウィーク日本版 / 2015年11月6日 16時51分
先週エジプトのシナイ半島で発生したロシア旅客機の墜落について、「機内に爆発物が仕掛けられた可能性が高い」という米英発の情報が広がっている。これを受けてイギリスやフランス、ドイツの主要な航空会社は、シナイ半島シャルムエルシェイクへの旅客便の運航を次々に停止している。
イギリス外務省のホームページは今週5日付けで、「(ロシア機の)墜落は爆発物が原因だった可能性が相当に高い」という情報を掲載した。イギリスのキャメロン首相も、墜落の原因が「おそらくは」爆発物によるものだと発言している。
またアメリカのオバマ大統領は、今回の墜落に関して「機内に爆弾があった可能性がある」とテロの可能性を示唆している。またAP通信によると、米情報当局も、事件前後に傍受した無線通信の解析などから、爆弾が使われた可能性があると見ている。空港関係者が爆弾の持ち込みを助けたという情報もあると言われているが、最終的な墜落原因の特定にはまだ至っていない。
一連の情報を受けてイギリス外務省は、不要不急の場合はシャルムエルシェイクへの渡航をやめるよう警告した。旅行サイトの「スカイスキャナー」によると、ロンドンからシャルムエルシェイクには週に41便の定期便が運航されているが、これまでにすべての航空会社が運航を停止した。
フランス政府も、安全保障会議の開催後に声明を出し、「乗客の安全確保のために」フランスとシャルムエルシェイクとの間の直行便の運航をすべて停止すると発表した。
この他、ドイツのルフトハンザ航空、アイルランド、ウクライナの航空などもシャルムエルシェイクへの運航の停止した。
ロシアの航空会社は、現在も数十便の運航を継続している。ロシアがテロ説を頑なに否定するのは、シリア空爆に対する報復で多くのロシア人乗客が命を落としたとなると、政権批判が避けられないから。それを避けるために、危ないかもしれない空を飛び続けている。
ボーンマス大学の旅行専門家イェガネ・モラカバティは、今回の事態はエジプトの観光業にとって打撃だという。「運航停止というイギリスの決定は正しいが、観光客の足はますます遠のいてしまう」と、モラカバティは言う。今年チュニジアで起きた2件の銃乱射テロなど、北アフリカでは最近、外国人観光客を狙ったテロ事件が続いていた。
イギリスの旅行代理店協会の14年版のリポートによると、14年当初、エジプトは人気の旅行先だったが、「政情不安でイギリス外務省がリスクを引き上げたとたんに、客足が急減少した」。エジプトがロシア機墜落をテロと結び付けたがらないのは、観光業界がさらなる打撃を受けるのを恐れてのことだ。
だが、既に手遅れかもしれない。投資サイト「インタラクティブ・インベスター」のマイク・マカデンは、英紙テレグラフの取材に対して、これで「北アフリカの観光地は『行ってはいけない場所』になるだろう」と語っている。
(編集注:イギリス政府は現地時間の5日、シャルムエルシェイクからの航空便については再開することを発表した)
フェリシティ・ケーポン
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