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脳を健康にするという「地中海食」は本当に効果があるか

ニューズウィーク日本版 / 2015年11月10日 18時16分

 それでは、栄養素はどうか? 脳がどう働き、どう成長するかに栄養素は影響しているのだろうか? もし影響するなら、どんな食物や栄養素が脳の健康によいのだろうか?

思考するための食物

 ここでなぞなぞをひとつ。もし、青い染料を私たちや動物の血管に注射したら、なにが起きるだろうか? ご想像のとおり、全身の組織が青くなっていく。しかし例外があって、脳と脊髄は青くならない。それは、血液のなかを流れるある種の物質――バクテリアなど――が脳に侵入するのを防ぐ血液脳関門があるからだ。半透性の血液脳関門は毛細血管に沿って存在し、毛細血管の周囲にタイトな防御壁を作っている。脳内が一定の環境を保てるように働き、一方で、重要な分子が脳内に拡散するのを許している。

 血液脳関門を通過することが許されるふたつの重要な分子が、酸素とグルコースだ。脳は全体重の2%しか重量がない。しかし、要求するエネルギー量がとてつもなく大きい器官であり、心臓が拍出する血液の15%を受け取っている。それは、全身で消費している酸素の20%、同じく、全身で消費しているグルコースの25 %を使っていることを意味している。別のアングルから説明すると、動脈血からおよそ50%の酸素と10%のグルコースを抜き取っている。その小さなサイズから考えると信じられないほどの量だ。

 糖類のひとつであるグルコースが脳の燃料の源泉になる。脳細胞にはグルコースを貯蔵する力がないので、血液が運んでくるグルコースを頼みとしている。血液中のグルコースは、そのほとんどが炭水化物由来だ。炭水化物はでんぷんと糖でできていて、私たちはそれを、穀物、フルーツ、野菜、乳製品の形で摂り入れている。

 複合糖質(自然食品に含まれていることが多い)はゆっくりと分解されながら、脳に供給される。それに比べて、単純糖質(ほとんどの加工食品や甘い食品に含まれている)はすばやく分解され、血液の流れのなかに急激に放出される。

 甘い食品が血糖値を急上昇させ、すばやく脳を活性化させる理由はここにある。しかし、その効果は長続きしない。それは、血液中から過剰なグルコースを抜き取ってのちの使用に備えて貯蔵するよう、インスリンホルモンが細胞に向かってシグナルを出すからだ。ところが、ほかの細胞と違ってニューロン(神経細胞)にはグルコースを貯蔵する力がなく、脳内にある燃料(グルコース)が枯渇すると外から補充するしかない。

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