アルカイダからISに「鞍替え」する世界のテロ組織
ニューズウィーク日本版 / 2015年11月30日 17時15分
テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)は、先月のパリ同時テロで世界中にあらためてその存在を知らしめた。今や世界各地のイスラム過激派が、その傘下に入ろうと熱い視線を送っている。
ナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラムは、これまで単独でテロ活動を続けてきたが、今年3月にグループの名称を「イスラム国西アフリカ州」へと変更し、ISISの下部組織となった。
一方、国際テロ組織のアルカイダと固い絆で結ばれるソマリアのイスラム過激派アルシャバブでも、主要メンバーがISISへと転向する動きが出始め、組織の結束が揺らいでいる。
今年10月、ソマリア東部プントランドの司令官を務めるアルシャバブの幹部メンバー、アブディカディル・ムミンが、手下のメンバー約20人と共にISISへの転向を表明した。
アルシャバブ指導部は、こうした動きを抑え込もうと躍起になっている。先月、ISISに同調する姿勢を見せていた幹部メンバーが、銃撃されて殺害されている。アルシャバブ内では、秘密警察組織として知られる「アムニヤット」がISISに同調するメンバーを洗い出して拘束していると言われている。
人数はまだ少ないものの、アルシャバブ内のこうした転向者は、ISISにとって東アフリカ地域でさらに多くの賛同者を集める足掛かりとなるだろう。
ただ2012年にアルカイダ参加の組織となったアルシャバブは、アルカイダの当時のリーダー、ウサマ・ビンラディンから直接指示を受ける程、強いつながりを持っていた。
またアルカイダにとっても東アフリカでの活動歴は長く、2001年にアメリカで同時多発テロを起こす以前には、アルカイダの最大規模のテロは、ケニアとタンザニアのアメリカ大使館爆破テロだった。
アルシャバブがアルカイダと袂を分かつことになれば、アルカイダとの連携で培ってきたこうした様々なリソースを手放すことになる。テロ研究の専門家によると、東アフリカでISISはまだ、アルカイダに匹敵する程のネットワークは持っていない。
しかしISISには、ソーシャルメディアなどを活用した強力なリクルート能力がある。かつてはヨーロッパや北アフリカから若者たちがアルシャバブに参加していたが、今やそのほとんどがシリアのISISに向かっている、と複数の専門家が指摘している。
こうした流れは、今後さらに加速するだろう。パリ同時テロでISISは、これから世界の各地でテロ活動を行うことを宣言した。それに比べると、ここ最近のアルカイダの活動はほとんど注目されていない。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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