『スター・ウォーズ』を描き続けて
ニューズウィーク日本版 / 2015年12月9日 18時30分
最近はルーカスフィルムからの催促はほとんどなく、着想が生まれ次第どんどん提案している。先方もリスペクトしてくれていて、完成した作品には修正要請を一切してこない。ただし、作品が気に入らなければ受け入れない。とても明快で緊張感のある、私の好きな世界だ。
アクリル絵の具で筆やエアブラシを使って描くのが私のスタイルで、これはずっと変わらない。写真やCGのようなリアルさを強調する、ものすごいテクニックを持った描き手はアメリカなどにたくさんいる。そんな世界で生き残るには、技巧よりも発想力が大事だ。
――確かに、ほかではあまり見ないモチーフが目立つ。
日本の武士の鎧兜(よろいかぶと)を身に着けたダースベイダーのような『スター・ウォーズ』以外の世界との融合や、レイアやアミダラといったヒロインのバストアップのカット、100体以上のキャラクターが一堂に会した一枚など、ありそうでなかったイメージを掘り起こすのは楽しい。
黒澤映画や時代劇テイストを好むルーカスの眼鏡にもかなったようだ。屏風(びょうぶ)絵シリーズの『Butterfly』などは、ルーカスに日本文化への憧憬があったからこそ受け入れられたと思う。
――発想のポイントは?
普通にやってしまうと面白みもオリジナリティーも生まれない。自分の角度から世界をつくり上げ、『スター・ウォーズ』の要素を練り直す。ただし、本道から外れ過ぎないさじ加減も忘れてはならない。一見外れているようでいて、よく見ると「アリだよね」という世界を構築できるかどうか。『スター・ウォーズ』の根本的な世界観をいったん咀嚼した上で、許容範囲のギリギリまで攻めていくイメージで描いている。
――新作『フォースの覚醒』をどう評価する?
実は私が新作に関して把握している情報は、公式サイトや関連書・雑誌で明らかになっている内容と同じだ。映画を公開前に見る機会はない。これまでもそうだった。
――見ていない映画についてイラストを描くのは大変そうだ。
自分で集めた資料を基にコンセプトを練り、描いていく。それだけだ。
もっとも今までのファンと、これからのファンでは見えている世界が違うはず。新作からのファンでも理解できる旧作のイラスト、逆に既存のファンにとっても違和感のない新作のイラスト。チャレンジだが、そうした橋渡しが可能なのもイラストレーションの醍醐味ではないか。
――どんな工夫を?
『エピソード1』から『エピソード6』まではダースベイダーことアナキン・スカイウォーカーの物語だった。彼自身、そして彼のフォースの誕生から死までがつづられている。『エピソード7』で始まる新たな3部作では、彼の物語が次の世代へ受け継がれていくストーリーが柱になると聞いている。ニューズウィークの『スター・ウォーズ』特別号の表紙に提供したイラストでも、そのニュアンスが感じられるように心掛けた(日本版ムックは12月9日発売)。
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