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インド、日本の新幹線を採用――中国の反応と今後の日中バランス

ニューズウィーク日本版 / 2015年12月15日 16時30分

 あるいは「中国は負け惜しみばかり言ってないで、自国の技術を本当にレベルアップしてくれよ」とか「習大大(習おじさん)は、外国にばらまく金があるのなら、北京で呼吸ができるようにしてくれないかな」といった類の政府を皮肉る書き込みも散見され、まだ削除されていない。

日本にとっては分岐点――「龍と象の争い」が後押し

 インドネシアの高速鉄道建設では中国に持っていかれ、機会を逃した日本だったが、今般の安倍首相の成果は評価に値する。

 なぜなら中国の「一帯一路」計画において、もしインドまで中国に持っていかれたとすると、日本の今後の経済発展空間においても、また安全保障の面においても、日本には非常に不利になっただろうことが考えられるからだ。

 インド側からすれば、たしかにモディ首相は習近平国家主席に満面の笑みを送り、熱烈歓迎し、また西安詣でまでしているが、しかしなんと言っても中印両国の国境線における領土紛争は絶えたことがない。表面化しないよう、また激化しないように互いに抑えてはいるものの、モディ首相の本音は、やはり「自由主義陣営」にいて、中国に呑まれないようにするということにあるだろう。

 今般の日印首脳会談では、インドとアメリカが行っている海軍の共同訓練に、日本の海上自衛隊が恒常的に参加することを確認し合ったとのこと。それは明らかに中国の南シナ海における海洋進出を牽制するためと解釈できる。

 インドはその意味で「チャイナ・マネー」を選ばず、自ら独立して歩む「自由の道」を選んだことになる。

 インド人のIT分野における能力は非常に高い。

 カリフォルニアのシリコンバレーの大半を占めているのはインド人と中国人だ。そのためICチップをもじって、Indian-Chineseを「IC」と称する。インドはまた、チャンドラセカール(1910年~1995年)という著名な天体物理学者を生んだこともある国だ。頭脳の優れた逸材が多い。

 今後はインドから来日する人を増やすために、ビザの発給要件を緩和するそうだ。

 つねに「歴史問題」で日本にカードを切ってくる中国からの留学生は、日中の政治の狭間で苦しんでいる。日本が好きだから日本に来ても、それがいつ「売国奴」よばわりされる方向に変わるか分からない。ひどくビクビクしながら日本留学を選んでいるのが現実だ。

 それに比べるとインドには「反日」の環境がなく、歴史カードをいつまでも掲げてくる要素もない。

 今後の経済発展のポテンシャルは中国より遥かに高く、いずれ中国を追い抜くだろう。

 経済界にとっても学生を募集する教育界にとっても、今般の提携は朗報だ。

 この競争に勝ったことは、日本にとって大きな分岐点になるにちがいない。


[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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