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「夫婦別姓議論」に時間をかける余裕はない - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2015年12月17日 16時30分

 女性の地位向上は、夫婦別姓に関する価値観論争よりもっと単純な問題です。「30%」を本気で実現しようと思うなら、新卒一括採用と年功序列、終身雇用をやめて、社会の全体、あるいは世界中からの登用でもいいので、「本省課長級の公募」をすればいいのです。本気で公募すれば、各省庁の課長級の職務に耐えうる女性の人材を採用する事はできるでしょう。

 もちろん「できない」理由はいくらでも挙げられます。ですが、2003年に「2020年に30%にする」と設定したのであれば、それに合わせて新卒でも中途でも、優秀な女性を囲い込むぐらいの努力をすればいいのです。例えば新規採用の7割を女性にして、昇進昇格も男性よりハイスピードにして、管理職に仕立てるための「猛烈な訓練をする」とか、そうでなければ前述のように「世界から公募して課長級以上の管理職の30%を女性にする」しかなかったはずです。

 それを適当に流しておいて、気がついたら「できませんでした」というのは、最初から改革をする気がなかったというのと同じです。夫婦別姓の問題も、この「女性活躍の失敗」と同じようにスローな時間軸の中で埋没してしまうのではないかと危惧します。

 どうして夫婦別姓が必要なのか。それは「嫁入りして家長の姓に合わせる」という価値観が男尊女卑につながり、結果として家事や育児の共同分担が遅れ、非婚少子化を招いているという深刻な問題に重なっている――。だから改革が必要なのだと、少なくとも賛成派なら、そこまで真剣に考えて、堂々と改革への論争を仕掛けるべきではないかと思います。

 女性管理職の「30%」を掲げて12年経って「できませんでした」という旧世代の影響力が細るまで、「夫婦別姓」の実現には時間をかける、そんなことでは改革は遅すぎるでしょう。

 今回の合憲判決を一つの契機として、「同姓は不便だから」という腰の引けた論争ではなく、男女の本質的な平等と、家事・育児・家庭教育参加への共同参画を問う「価値観論争」という正面からの問いかけをして、改革のスピードアップを図るべきではないでしょうか。

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