ネット世界「地球村」で孤立する「紅い皇帝」――第二回世界インターネット大会
ニューズウィーク日本版 / 2015年12月17日 19時27分
この大会を仕切ったのはチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員7人)の党内序列ナンバー5の劉雲山だ。イデオロギー担当である。
よもや、ネット空間を通して世界のイデオロギーを統治しようとまでは思ってないだろうが、少なくとも牽制しようという意図がありありだ。おそらく、次はネット社会を制する者が世界を制するという戦略から、このような世界インターネット大会なるものを創設したのだと思うが、ネットは「言論の自由」を求めるものであり、「言論弾圧」とは正反対のベクトルが支配する。その自由空間を、世界で最も言論弾圧をしている国がリードしていこうなどと考えること自体がまちがいだ。時代を分かっていない。
チャイナ・マネーでは、世界の言論は買えないことを肝に銘じるべきだろう。
習近平に寄り添う馬雲
しかし、中国国内においては事情は異なってくる。
12月13日付の本コラム「アリババが香港英字紙買収――馬雲と習近平の絶妙な関係」で書いたように、アリババ集団の馬雲は、「紅い皇帝」習近平にへつらい、ペアで言論統制とネットビジネスを行なっている。民主的な傾向のある香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストを買収したことによって、香港の言論をビジネスという観点から抑圧していこうという算段である。
自由にものを言うメディアは、もうアップル・デイリーくらいしか残っていない。習政権にとって馬雲は、デリケートな香港の言論空間はコントロールしてくれるし、中国のネットビジネスは飛躍的に成長させてくれるし、多少の「闇」があっても、目をつぶりたいところだろう。
馬雲がサウスチャイナ・モーニングポストを買収したのは、この世界インターネット大会への赤絨毯であったという、「絶妙なタイミング」が、このことからも見えてくる。
この日も、「紅い皇帝」にひざまずかんばかりの馬雲の姿がカメラに収められている。習主席の向かって右にいるのはチャイナ・セブンのイデオロギー担当である劉雲山。左には馬雲がかしずいている。これほど中国の今と、この大会の意味を象徴している写真はないだろう。
馬雲が案内したのはこの日の展示場で、習主席はまずアリババの展示場に行き、馬雲の説明に聞き入った。ここに10分間も立ち止まって説明を聞いたと中国大陸のネットは書き立てている。
それにしても、12月14日の本コラム「インド、日本の新幹線を採用――中国の反応と今後の日中バランス」で書いたように、日本がインドの新幹線を選んだことによって中国が受けた打撃は、あまりに大きい。一帯一路構想を分断されたようなものだから、習主席の表情は冴えず、「紅い皇帝」の自信も消え失せている。
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