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映画《東京オリンピック》は何を「記録」したか

ニューズウィーク日本版 / 2015年12月25日 15時22分

 競技場が安上がりで済むのは結構なことだが、そのことばかりに目を奪われていると、夢のあるような話はすべてどこかに消え失せてしまうだろうし、類似作品を探すことばかりに血道を上げていれば、元来先人の知恵から学ぶことなしには成り立つはずのない創作活動を窒息させてしまうことにもなりかねない。インターネットで多様な情報が行き渡ったのはもちろん悪いことではないが、そのことが視野の狭まりや本末転倒につながる危険も忘れてはならない。著作権、個人情報など、そういうことが現代に通底する病弊なのではないかと感じさせられる局面は少なくない。今のわれわれからみると、いかにも素朴で天真爛漫にみえる市川監督のオリンピック映画だが、あのような時代はもう終わった、と片付けてすむ話ではない。

[筆者]
渡辺 裕(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
1953年生まれ。東京大学文学部卒業、同大学大学院修了。玉川大学文学部助教授、大阪大学文学部助教授などを経て現職。専攻は音楽社会史、聴覚文化論。著書に『聴衆の誕生』(春秋社、サントリー学芸賞)、『日本文化 モダン・ラプソディ』(春秋社、芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『歌う国民――唱歌、校歌、うたごえ』(中公新書、芸術選奨文部科学大臣賞)、『サウンドとメディアの文化資源学』(春秋社)など。

※当記事は「アステイオン83」からの転載記事です。





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『アステイオン83』
 特集「マルティプル・ジャパン――多様化する『日本』」
 公益財団法人サントリー文化財団
 アステイオン編集委員会 編
 CCCメディアハウス


渡辺 裕(東京大学大学院人文社会系研究科教授) ※アステイオン83より転載


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