内容は腰砕けだった、オバマの「銃規制案」 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月7日 17時0分
残念ながら、この「ブレイディ法」は時限立法であり、ブッシュ政権が更新しなかったために失効しました。そして、その失効後に膨大な量の「アサルト・ライフル」が合法的に販売されているのです。そして、ここ数年発生している乱射事件では、この「アサルト・ライフル」が使われることで、多くの犠牲者を出しています。
ですから、この「アサルト・ライフル」と「多弾マガジン」の販売禁止は急務と言えるのですが、この点に関しては銃保有派の抵抗が激しいために、大統領も今回の案に含めることはできませんでした。
どうして世界的にも見ても異常な「軍用連射銃」が野放しになっているのかというと、それは単純な理由です。銃保有派には「連射能力の高い銃が出回っている」のなら「自分も持っていないと自分や家族が守れない」という感覚があるのです。つまり、相手を上回る火力がなくては不安だということです。
それにしても、今回のオバマ大統領の会見は奇妙でした。例えば、有名になった「涙」のシーンというのは、2012年12月にコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で「小学校1年生が20人殺された」ということに言及した際のものでした。
その中で「20人」それも「小学校1年生」と繰り返す中で感情があふれてきたのですが、この事件こそ「アサルト・ライフル」の恐ろしさを社会に決定的に印象づけたわけで、この事件に言及しておきながら、その問題を施策に盛り込めないどころか、言及すらできないというのは、腰が引けているとしか言いようがありません。
さらに、本来であれば議会を動かして法案を成立させて実施すべき規制策を、議会では「絶対に通らない」からということで、大統領令(エグゼクティブ・オーダー)で済ませたというのは、逃げ腰と言われても仕方がないと思います。
ちょうど大統領選の予備選が進行する中で、これに対して共和党の各候補からは一斉に反発の声が上がっています。特に「大統領令」で規制を行ったことに対しては「ヒトラーのような強権だ」とか「自分が大統領になったら初日に破棄する」などという激しい言葉で罵倒されています。
反対に、民主党の側は大統領の立場に理解を示して、銃規制を推進するという立場を取っていますが、選挙戦でどこまで真剣に銃規制を訴えることができるかどうかはわかりません。
いずれにしても、今回の会見と「大統領令」の発令で、おそらくオバマ政権としての「銃」への取り組みは「終わり」になると思われます。だとすれば、その成果は極めてお粗末だったとしか言いようがありません。とてもオバマの「レガシー(遺産)」になるような話ではないのです。
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