トルコ攻撃に見え隠れするロシアの「自分探し」症候群
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月12日 18時30分
プーチンも大国の指導者としてG8に参加したものの、まるで19世紀にパリやロンドンのホールで踊ったロシアの貴族のような居心地だったことだろう。「貴殿のスカートの下には毛皮のコートが見え隠れしている」と揶揄され、「ヨーロッパの貴族のように振る舞っても、出自は草原の遊牧民」との嫌みを言われ続けたような気分だったに違いない。
そうした欧米の傲慢さが結果としてプーチンをいら立たせ、クリミア併合とウクライナ東部への介入をもたらした。何しろロシアにはナポレオンやヒトラーに勝利したという歴史的な自負がある。ヨーロッパに対する勝算も十分だ。
問題は攻撃の矛先をトルコにまで向けたことだ。自他共に認めるトルコ系諸民族の盟主を執拗に敵視するならば、自らの首を絞めかねない。既にユーラシアにおいて、トルコ系諸民族のほうがロシア人を人口で凌駕しているし、何よりも草原の住民も歴史的に「ロシアの一員」だったのだから。
[2016.1.12号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)
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