暴走「将軍様」を見限れない習近平の本音
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月14日 15時2分
北朝鮮の暴挙は中国とアメリカの軍事対立も激化させかねない。北朝鮮の核による挑発を受けて、アメリカは北朝鮮に対する抑止力として東アジアにおける軍事力を強化するに違いない。アメリカにとって東アジアで最も重要な同盟国である日本も、地域の安全保障に一層積極的な役割を果たすよう求められるはずだ。そうなれば中国は自国を封じ込めるための陰謀と見なし、緊張が高まるのは避けられない。
北朝鮮による核実験は中国の習近平(シー・チンピン)国家主席のメンツにも関わる。習は13年の就任以来、それまでの対北朝鮮政策を見直し、北朝鮮を罰しているとはとても言えないものの距離を置いてはいる。過去3年間、両国関係はこれまでになく冷え込み、習はまだ金を中国に招待していない。
ようやく雪解けの兆しが見え始めたのは昨秋だ。10月に中国政府高官が平壌を訪問、12月中旬には金お抱えの女性音楽集団「モランボン楽団」が北京入りした。ところが楽団は北京公演を直前にキャンセルして帰国した。詳しい理由は不明だが、金は公演直前に突然「水爆保有発言」をしており、それが習を激怒させたとされる。
これで習も北朝鮮を懲らしめざるを得ないはず──と思うのは甘い。どれほどメンツをつぶされても、残念ながら中国の戦略的計算は変わりそうにない。習にとっても中国共産党幹部にとっても、自国の安全保障と党の存続に対する最大の脅威は依然としてアメリカだ。北朝鮮はそのアメリカに対抗するための切り札。お説教は必要だが、つぶすわけにはいかないのだ。
[2016.1.19号掲載]
ミンシン・ペイ(米クレアモントマッケンナ大学ケック国際戦略研究所所長)
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