【台湾現地レポート】ミュージシャン出身委員も誕生させた民主主義の「成熟」
ニューズウィーク日本版 / 2016年1月18日 15時12分
かつて台湾選挙といえばお祭り騒ぎだったが
台湾現地を取材して強く感じたのは「成熟」だった。台湾の選挙といえばお祭り騒ぎで、なにか大変なことが起きるのではないかというムードが漂っている......。これは先輩から伝えられた話だが、今や状況は大きく変わった。台湾のメディアは相変わらず熱狂を演じているが、人々から聞く話や政策からは落ち着きが感じられる。
印象的だったエピソードを最後にあげたい。それは投票所でのこと。一人の女性がスマートフォンを片手にじっと開票作業を見守っていた。話を聞くと、NGO「監票者連盟」のボランティアスタッフだという。台湾全土で4000人以上がボランティアスタッフとして従事しており、開票作業に不正がないかチェックしているという。
まだ20代前半だというその女性は、ひまわり学生運動で民主主義の重要性を強く意識したと話す。ただ彼女の行き先は民進党でも新興政党でもなく、民主主義の枠組みを守るNGOだった。
政治の成熟に伴い投票率が低下するのは当然だ。だがその先にあるのはたんなる無関心ではない。成熟した政治意識に基づく新たな動きが根付いていることを感じた。
[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
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